小説「新・人間革命」厚田 41  2012年8月2日

山本伸一には、石崎聖子の胸の内がよくわかった。彼は、笑顔で包み込むように語った。
「この座談会は、大成功でしたよ。
何も悲観する必要はありません。あの教員の方々の心には、しっかりと、仏法のこと、学会のことが打ち込まれていますよ。
それに、私は早く終わって、ご主人とお話しができればいいなと思っていたんです」
夫の石崎好治も、自分が、あの教員たちを呼んだだけに、申し訳なく思っていた。
伸一は、好治に声をかけた。
「ご主人は、まだ、入会されていないのに、六人もの友人を座談会に連れて来られた。
仏の使いとしての使命を果たされたんです。
奥さん、ご主人は、必ず信心されますよ」
こう言うと、彼は好治の肩を、ポンと叩いた。そして、好治に語った。
「ご主人も教員をされているそうですが、大事なことは、いかなる教育理念をもつかです。
教育者であった初代会長の牧口常三郎先生は、教育の目的は、どこまでも、子どもの幸福にあると明言されています。
子どもの幸福を実現するには、人間とは何か、生命とは何かを、明確に示した生命の哲理が必要不可欠です。それを説き明かしているのが仏法なんですよ。
石崎さんは、どうか、教え子たちの幸福を実現できる教育者になってください」
石崎好治は、伸一の話に胸を打たれた。いや、何よりも、確信と慈愛にあふれた伸一の人柄に共感したのだ。
『自分も仏法を学び、実践してみよう!』
三日後、彼は入会した。
夏季地方指導で多くの弘教が実った札幌では、組織の拡充が図られた。
石崎は、学会の
ことも、信心のことも、わからないことだらけであったが、入会一週間後、最前線組織のリーダーである組長の任命を受けた。
『私は、自ら学会についていこうと決めて信心を始めた。
一度心を定めたからには、なんでも引き受け、挑戦していこう』
彼は、そう心に誓っていたのだ。