小説「新・人間革命」厚田 42 2012年8月3日
山本伸一は、石崎をはじめ、名誉称号が授与される故人の名前が読み上げられるたびに、その遺徳を偲びながら、拍手を送り続けた。
追善法要のあいさつで、伸一は、日蓮仏法の死生観について語っておこうと思った。
彼は、「上野殿後家尼御返事」を拝した。
「い(生)きてをはしき時は生の仏・今は死の仏・生死ともに仏なり、即身成仏と申す大事の法門これなり、法華経の第四に云く、『若し能く持つこと有れば即ち仏身を持つなり』云云」(御書一五〇四ページ)
伸一は、大確信をもって講義していった。
「この御書は、日蓮大聖人から『上野賢人』といわれた南条七郎次郎時光の母親であり、南条兵衛七郎の妻である上野尼御前への御手紙です。
上野尼御前は、夫が死去したあと、たくさんの子どもたちを立派に養育し、純真な信心を貫いてきた女性であります。
ここで大聖人は、亡き夫である南条兵衛七郎は、生きておられた時は『生の仏』であり、亡くなられた今は『死の仏』である。生死ともに仏であると述べられています。
新しい挑戦の意欲が満ちあふれてくる。生きていること自体が喜びである”というのが、成仏の境涯であり、『生の仏』の姿なんです」