小説「新・人間革命」 2013年 1月8日 法旗 29
愛媛指導の二日目の朝、山本伸一が最初に顔を出したのが、愛媛文化会館の管理者室であった。
陰で黙々と会館を支えてくれている人にこそ、何度も会い、最大に讃え、励ましたかったのである。
昼前には、婦人部の幹部と活動の進め方などについて語り合ったあと、午後には、文化会館の庭で記念植樹などを行い、松山市内の日蓮正宗寺院を訪ねて住職と懇談。学会は宗門を守り、僧俗和合して広宣流布をめざす決意であることを訴えた。
彼は、各地の寺院には常に心を配り、大切にしてきたのだ。
その後、これまで県の中心会館として使用されてきた松山会館を視察した。
この日の夕刻、愛媛県幹部会が開催されることになっており、そこに出演する婦人部と女子部の合唱団が練習をしていた。
「こんにちは!」
伸一の姿を見ると、歓声が起こった。
「合唱団の皆さんにお会いできて嬉しい。歌は大事なんです。
どうか、勇気の歌声を、希望の歌声を、歓喜の歌声を、わが同志に届け、元気づけてあげてください」
広宣流布の道には、常に学会歌の調べがあった。
弘教に走る歓喜の朝も、非難中傷にさらされた涙の夜も、同志は、学会歌を口ずさみ、自らを鼓舞してきた。
声高らかに歌う学会歌は、地涌の師子の雄叫びだ。そこに、汲めども尽きぬ勇気の泉が湧く。
伸一は言った。
明るく、朗らかに、文化の薫りも高いというのが創価の民衆運動なんです」
そして彼は、皆のためにピアノを演奏した。