小説「新・人間革命」 2013年 2月2日 法旗51
山本伸一は、第三代会長に就任して二年後の秋、岩田サワに一冊の真新しいアルバムを贈った。
その扉には、「幸福の綴」と認められていた。苦労に苦労を重ねてきた人ゆえに、さらに幸せの花を咲かし続け、その記録を、ここにとどめてほしかったのである。
事実、彼女は、その後、“幸福の女王”として、信心の実証を示し抜いてきたのである。
伸一は、今、松山支部結成十八周年を祝賀する記念勤行会で、岩田に花束を手渡しながら、語りかけた。
「あなたは“愛媛の母”です。一途な戦いの心を、草創の精神を、次の世代に伝えていってください。
それが、母の役目です。特に、新しい支部制のスタートにあたっては、その精神を伝え抜いていくことが大事なんです」
岩田の顔が決意に輝いた。
伸一は、彼の年齢を尋ね、六十歳だと聞くと、即座に言った。
「いよいよ、これからです。牧口先生は七十歳にして、よく『われわれ青年は』と語られたといいます。
平均寿命も延びてきていますから、今の年から、マイナス三十歳があなたの年です。青年同士、戦いましょう!」
こう言って伸一は握手を交わした。
副会長の関久男のあいさつに続いて、伸一の指導となった。
彼は、この席では、強盛なる祈りの大切さについて訴えておこうと思った。
信心の世界は、すべてが御本尊への祈りから始まるからである。祈りなき信仰はない。
祈りなき幸福もない。祈りなき広宣流布の勇者もない。
「私どもが幸福になるために、肝要なものは、日蓮大聖人が『湿れる木より火を出し乾ける土より水を儲けんが如く強盛に申すなり』(御書一一三二ページ)と仰せのように、強盛な信心です。
強い祈りです。叶わぬ願いは断じてないとの確信です」