【第9回】 世界が君の本舞台  (2013.1.1)

私が開いた友情の大道を皆さんに託したい
 
未来学者ヘンダーソン博士
世界市民とは自分が今いる場所から可能な限りの行動を起こす人。
 
名誉会長 未来部の皆さん、新年、おめでとう!
 グングンと大樹に伸びていく皆さん方と新しい年を出発できることが、私は本当にうれしい。
 
 ──中等部、高等部の皆さんからも、「海外で活躍できる人になります」「池田先生に続いて、世界中の人と友情を結んでいきます」等、新年の決意が寄せられています。
 
名誉会長 そう言ってくれる皆さんのために、私はこれからも世界に道を開いていきます。
 世界広宣流布の土台は、完璧にできあがりました。あとは「人材」です。みんなが力をつけ、偉大なリーダーに育ってくれることです。
 未来部の君の成長が、あなたの前進が、人類の希望です。
 どうか、心の世界地図を大きく広げ、自らの無限の可能性を開きながら、勝利、勝利の1年にしていってください。
 
 ──最近は、どの国に行っても、SGI(創価学会インタナショナル)のメンバーと会うことができる。そういう時代になりました。
 
名誉会長 すごいことだね。
 恩師・戸田城聖先生は、「君の本当の舞台は世界だよ」と、私に平和のバトンを託してくださった。私は、世界に行けなかった先生の分身として駆けめぐりました。師の心を心として、世界を友情で結んできました。
 SGIが発足したのは、38年前の1月のことです(1975年1月26日、グアム)。
 あの日、私は発足式の会場の署名簿に「池田大作」と書き、国籍の欄には「世界」と記しました。戸田先生が叫ばれた「地球民族主義」が、私の信条だからです。
 今やSGIの連帯は、192カ国・地域に広がっている。国家や民族、人種など、あらゆる違いを超え、人類を結ぶ平和の連帯になっています。
 一人一人が、それぞれの国、それぞれの地域に根を張り、「良き市民」として、信頼を集め、社会に大きく貢献しています。
 
 ──世界へ雄飛しようと決意する未来部員から、「世界市民になるためには何をすればいいですか」という質問がありました。
 
名誉会長 偉い。いい質問だね。
 「シンク・グローバリー、アクト・ローカリー」という言葉を聞いたことがあるかな。「地球規模で考え、地域から行動する」という意味で、世界市民の条件です。
 この言葉は、私と共に対談集を発刊した未来学者のヘイゼル・ヘンダーソン博士が、地球環境の問題を解決するために掲げていたスローガンです。
 博士は、私との対談で、世界市民になることは「決して難しいことではない」と言われていた。大事なのは、さまざまな世界の問題に対して、「同じ地球に住む一人の人間として、今、自分が住んでいる場所で、可能な限りの行動を起こしていくこと」と語られています。
 この言葉を、皆さんに贈りたい。「世界市民」とは「心」で決まる。日ごろの「行動」で決まります。
 
 ──ヘンダーソン博士は、もともと無名の一主婦でありながら、大気汚染などの環境の改善に立ち上がった女性リーダーですね。
 
名誉会長 そうです。今から50年ほど前のアメリカ・ニューヨークは、人の肌がススで汚れてしまうほど、大気汚染がひどかった。博士は、子どもたちの未来を守るために、立ち上がりました。
 まず、広場に集まる母親たちに声をかけ、少しずつ仲間を増やし、小さなグループをつくりました。そして、市長やテレビ局に手紙を書き、庶民の苦しみを訴えました。環境を破壊する企業にも強く抗議します。しかし、主婦に何が分かるとあざ笑われました。
 しかし、博士は負けなかった。自らが猛勉強していくとともに、市民の声を高めながら、ねばり強く、公害を規制する法律を成立させる流れをつくっていきました。
 
 ──一人の勇気ある行動が、社会を変え、世界を変革していったのですね。
 
名誉会長 その通りです。
 ヘンダーソン博士の勇気の原点は、偉大なお母さんの姿でした。
 博士が6歳の時、第2次世界大戦が起こり、当時住んでいたイギリスも空爆を受けました。博士のお母さんは、焼け出された人たちのために自宅の部屋を開放し、多くの人々を助けたのです。
 自分も苦しい、それでも、苦しんでいる人を救わずにいられない──この崇高な母の魂こそ、「世界市民」の原点です。
 実は「世界市民」の最も良い模範が、皆さんのすぐ側にいる。それは、みんなのお父さん、お母さんであり、近所の学会員さんです。
 毎日毎日、地域のため、あの人この人のために、一生懸命、行動を積み重ねながら、しかも「世界広宣流布」という、大きな大きな理想に燃えています。
 時には「トインビー博士は……」とか、「ゴルバチョフ元大統領も……」などと、まるで自分の友だちのようにしゃべる(笑い)。
 悩む人がいれば、生命の希望の哲学を語り、宇宙の大法則を語り、人間蘇生の体験を語る。共に涙を流し、共に祈り、励ましを送る。
 これほど地道に、着実に、人類の幸福のため、世界の平和のために貢献している人が、どこにいるだろうか。この素晴らしき創価の父母《ちちはは》の連帯を、ヘンダーソン博士も心から称賛されています。
    
 ──あるメンバーから、「池田先生のように、文化や言葉、宗教も違う人と語り合い、世界に友情を結ぶには、何が大切ですか」という質問がありました。
 
名誉会長 「世界」と言っても、根本は「人間」対「人間」です。
 同じ「人間」という視点に立てば、共通点はたくさん見つかります。
 特に「生老病死」という万人の課題を、心ある知性は真剣に思索しています。ですから、仏法を学び、実践しているということは「生命」という最も奥深い次元で心が通う対話を進めることができるのです。
 ともあれ、外国の方々と友情を結ぶと言っても、何も特別なことではありません。
 人間として尊敬するのです。
 人間として率直に語るのです。
 人間として理解し合うのです。
 ゆえに、人間としての振る舞いが重要です。
 例えば、自分からあいさつができる人、自分から声を掛けられる人は、世界市民です。朗らかなあいさつ一つ、明るい声一つで、ああ、この人は、いい人だなと、相手が安心し、打ち解け合うことができるからです。
 また、「約束は必ず守る」ことも世界の指導者に共通しています。
 戸田先生は、「青年の最高の修行は、約束を守ることだ」と、いつも教えてくださった。
 偉大な人は、信義を貫きます。友との約束、そして、自分自身との約束を、絶対に破りません。誓ったことを必ずやり通す──この人間としての「信念」が、君を、あなたを、世界市民へと育ててくれるんだよ。
 
 ──池田先生の「人間外交」は、日本と中国、日本とロシアな
ども大きく結んでこられました。
 
名誉会長 平和を愛する一人の人間として、私は私の次元で「可能な限りの行動」を誠実に貫いてきただけです。
 1974年、私が初めて中国を訪問した時、かわいらしい一人の少女が私にたずねてきました。
 「おじさんは、何をしに中国に来たのですか?」
 私は答えました。
 「あなたに会いに来たのです」
 それは、まぎれもない私の率直な思いでした。「人間と人間、民衆と民衆、青年と青年を結ぶ懸け橋に」──これが私の決心でした。
 中国に続いて、ソビエト連邦(現在のロシアなど)も訪れました。当時、ソ連こわい国という印象を持っている人が少なくなかった。行く前には、宗教者なのに、なぜ宗教を否定する共産主義の国に行くのかと、批判もされました。私は答えました。
 「そこに、人間がいるからです」
 そうやって世界に開いてきた「友情のシルクロード」を、私は皆さん方に託していきます。
 
 ──池田先生は、アメリカの名門コロンビア大学での講演で、世界市民の模範として──
 ①生命の平等を知る「智慧の人」
 ②違いを尊重できる「勇気の人」
 ③人々と同苦できる「慈悲の人」の3点をあげられました。
 この視点は、世界の争いごとを解決するための重要な条件としても注目されています。
 
名誉会長 皆さんは、これから世界中の人と友だちになり、平和を創造していく若き指導者です。
 学びに学んで、人間としての実力を、じっくり磨いていってください。
 世界の文学にも挑戦してもらいたいね。読書は、ただ「情報」を得るだけではなく、その国の文化や歴史も深く学ぶことができる。豊かな「心」の共感を広げてくれます。
 とともに、語学をしっかりと学んでほしい。語学は世界へのパスポートです。一つの言語と言わず、これからは二つも、三つも必要になります。
 東北・岩手生まれの新渡戸稲造博士は、若き日に「太平洋の懸け橋」となることを志し、国際連盟事務次長も務めた世界市民です。初代会長の牧口先生とも、交友がありました。その博士が、こう言われています。
 「自分の現在の義務を完全に尽くす者がいちばん偉いと思う。そして、自分の現在の義務は何であるかをはっきり認め得る人は、人生の義務と目的とを理解する道に進むであろう」(新渡戸稲造著『自分をもっと深く掘れ!』三笠書房刊)
 博士は、今の自分自身を掘り下げていけば、世界に道は開かれていくと考えていました。
 今、この時に、学んで学んで、自分を深めていく──その努力の先に、世界はいくらでも広がっている。
 世界がみんなを待っています。
 
 ──未来部員の中には、語学が苦手という人がいます。
 
名誉会長 これまでは、そうだったかもしれない。しかし、人は変わることができます。学ほうと決意した時がチャンスです。
 勉強するのに「遅すぎる」なんてことは、絶対にありません。
 「習うより慣れろ」です。最近のあれだけ難しい日本語が話せるんだもの(笑い)、外国の言葉も必ず話せるようになります。
 私が、みんなと同じ年代のころは戦争中だったので、英語は敵性語として勉強できませんでした。
 もう一度、学生時代に戻れるならば、語学をしっかり身につけたいと、つくづく思います。
 だから、若い皆さんは思い切り語学を習得して、世界に友情を広げていただきたいのです。
 できれば、お父さんやお母さんも、外国に案内して差し上げてほしい。
 「世界広宣流布」は、日蓮大聖人が御生涯をかけられた大願です。御書を拝すると、「世界」をあらわす「一閻浮提」「閻浮提」「閻浮」という言葉が、実に200カ所以上も、記されています。
 この大仏法を持《たも》つ皆さんが、立派な世界市民と躍り出て、社会と広布のリーダーとして大活躍していくことは決まっています。
 その日を楽しみに、この1年も、皆さんと一緒に前進したい。
 さあ、新しい年の始まりに、新しい目標を掲げて出発しよう! 共に未来へ! 共々に世界へ!