【第11回】 使命の翼を広げよう!  (2013.3.1)

「自分がやる」と決めれば力が出る
 
名誉会長 春3月は、旅立ちの月、希望の出発の月です。
 私にとって、未来部の皆さんが見違えるように成長して、新たな一歩を踏み出していく姿ほど、心躍るものはありません。
 
 ──メンバーは、この1年、「未来対話」を学び、池田先生と心で語らいながら、前進してきました。私たち担当者のほうが、未来部員から師弟の息吹を教わっています。
 
名誉会長 うれしいね!
 未来部の皆さんも、担当者の皆さん方も、春夏秋冬、いつも私と心は一緒です。
 勉学や読書、クラブ活動、友情、親孝行、未来部の活動など、それぞれの挑戦を重ねてきたみんなの活躍は、毎日、報告をもらいました。全員が、努力の勝利者です。
 晴れの卒業を迎える皆さん、おめでとう! 3年間、本当によく頑張ったね!
 とりわけ、東日本大震災から2年、あらゆる困難を乗り越えてきた被災地の皆さんを、私は最大に讃えたい。どうか、これからも、家族や友人と支え合い、励まし合って、勝ち越えていってください。私は、一生涯、皆さんの人生の幸福と栄光と勝利を祈り、見守っていきます。
     
 ──女子高等部の卒業生は、晴れて女子部の「池田華陽会」の第6期生になります。
 
名誉会長 世界中に、皆さんの仲間がいます。すごい時代です。
 卒業する皆さんが、どこに羽ばたいていっても、私たちの心の絆は絶対に切れません。
 これからも、明るく健やかに、自分らしく思う存分、若き生命を伸ばしてください。
 3月は「弥生」ともいいます。弥生とは、草木が「いよいよ生い出る」という意味の「いやおひ」が語源だと言われています。
 冬を越えた若芽のように!
 春を告げる花々のように!
 これから広がる新たな舞台へ、「いよいよ」の勢いで飛び出していこうよ!
 
 ──卒業生の中には「せっかく仲良くなった友達と別れるのが、さびしい」という人もいます。
 
名誉会長 そうかもしれない。でも、よき友情は、一生涯を通して育てていくものです。たとえ、進む道が違っても、いくらでも励まし合える。お互いに若いのだから、共に未来を見つめて、カラッと明るく進んでいくんです。
 今まで以上に、たくさんの新しい出会いも待っています。
 センチメンタルな気持ちに流されず、朗らかに聡明に、よき縁を大切にし、心豊かな青春としてください。
 とりわけ、卒業は〝自分は周りに支えてもらっている〟と、人のありがたさを再認識する機会です。人間関係をいっそう深めるチャンスです。
 ご両親や家族、学校の恩師、友達や先輩・後輩、さらに地域の創価家族の方々などに、すがすがしく感謝の言葉を伝えてほしい。
 
 ──最高学年になる在校生からは、部活や生徒会の活動などで、「先輩たちのようにできるか、心配です」との声が届いています。高等部の部長や副部長になる友からも、「皆をどう引っ張っていけばよいでしょうか」との質問が寄せられています。
 
名誉会長 大丈夫! 誰だって、最初は不安なのが当たり前です。
 それは、リーダーとして、皆のことを真剣に考えている証拠だし、クラブや生徒会、わが部の今後に責任を感じているからでしょう。それ自体、素晴らしい指導者の心じゃないか。偉大な人間修行です。
 ただ、君は君、あなたはあなたです。先輩と同じようにはできないし、そうする必要もない。よき伝統は引き継ぎつつ、どこまでも自分らしく、誠実にベストを尽くしていけば、必ず道は開けます。
 ましてや、妙法を持《たも》っている皆さんです。朗々と題目を唱えて、苦労も喜びに変えながら、信頼される先輩、力あるリーダーに成長できないわけがない。
      
日本を代表する経済人 松下幸之助
成功するためには、成功するまで続けることである
 
 ──「自分から大きな役割を担うのは気が引けるし、自由を奪われる気がする」「責任を負うのは重い」という人もいるようです。
 
名誉会長 たしかに、「責任」と言われると、重く感じてしまうかもしれない。
 でも実は、「責任」を担った時こそ、自分自身のカラを破る最高のチャンスなんだ。
 皆さんは、実業家の松下幸之助さんを知っているかな。「松下電器産業株式会社(現・パナソニック)」の創業者で、「経営の神様」と呼ばれました。私も何度もお会いしました。会えば4時間、5時間と、人生の万般にわたって語り尽くしたことが懐かしい。共に対談集も発刊しました。
 松下さんは、人を育てる名人でした。
 こんなエピソードがあります。昭和の初め、電気アイロンは便利なものでしたが、庶民には手の届かない高級品でした。そこで松下さんは、一人の若い技術者を呼んで、こう言われました。
 「できるだけ安いアイロンをつくり、その恩恵に誰もが浴せるようにしたい」
 若い技術者は、賛成した上で、「しかし、誰がそれを担当するのでしょうか」と尋ねます。
 「君だよ。君ひとつ、このアイロンの開発を、ぜひ担当してくれたまえ」
 若い技術者は、アイロンをつくるのに必要な電熱関係の知識や経験がありませんでした。そこで、「私一人では、とても無理です」と断ってしまった。
 すると間髪を入れず、松下さんは、こう言い切ったのです。
 「いや、できるよ。君だったら必ずできる」
 この松下さんの期待に応え、青年は懸命に創意工夫を重ねていった。そして、これまでの性能を落とさず、価格を下げたアイロンを完成させたのです。「国産優良品」にも指定されるほどの高品質の製品です。
 
 ──若き技術者の力を、松下さんは見抜いていたのですね。
 
名誉会長 その通りです。それは、技術者自身も気づいていなかった「自分の中に秘められた力」だったんだ。
 のちに、この技術者は会社の重責を担うリーダーになりました。
 そして、あの日の松下さんとのやりとりについて、「あの『君ならできるよ』という小さな言葉が、私の心に火をつけたのです」と回想されています。
 松下さんは、青年を信じて使命を託した。その信頼が、若き心の中の「責任感」に火をつけた。
 青年は、「自分がやる。必ずやり遂げてみせる」と腹を決めることだ。一念が定まれぱ、自分自身も気づかなかった力が、どんどん湧いてくる。
 今回は、この松下さんの言葉を、皆さんに贈りたい。
 「失敗するかもしれないとかおそらくできないだろうということでなく、やれば必ずできる”“もし転んでも、そこに転がっているものをつかんでやり直そうという積極性、根性をもつ」
 「成功するためには、成功するまで続けることである」
 松下さん自身、何度も経営の危機に陥ったが、そのたびに立ち上がった。事業は人で決まると考え、仕事を託すなかで、粘り強く人を育てた。体が弱かったが、あきらめなかった。会社のため、そこで働く人や、その家族のため、さらに、日本と世界の繁栄のために──。
 責任感とは、「自覚」と「執念」の異名なのです。
      
 ──松下幸之助さんは、創価大学にも、関西創価学園にも、来られました。
 
名誉会長 教育に力を入れておられました。私より30歳も年長で、わが師・戸田城聖先生と同世代の方です。私は恩師をお迎えする思いで、ご案内しました。
 関西創価学園では、歓迎演奏が終わると、満面の笑みで鼓笛隊に歩み寄り、温かな関西弁で、「よろしゅうおますなぁ──。ほんまにおおきに」と何度も言われていた。
 学園生たちと交流した後、松下さんが、かみ締めるように語られた言葉が忘れられません。
 「きょうは、10歳も20歳も若返りました。青春の若さをもう一度得られるなら、自分は全財産を投げ出してもいいと思うてます。でも、それはできません。かわりに学園生の皆さんから、若さのエネルギーをいただきました」
 皆さんは、何ものにも勝る「青春の若さ」という財宝をもっています。若いということは、それだけで素晴らしいのです。何も恐れる必要はありません。
 戸田先生も、心から青年を愛してくださいました。
 理想へ向かうまっすぐな純粋さ、正義を貫く大情熱、そして、無限に成長しゆく未来性を絶対的に信じてくださったのです。
 
 ──間もなく、戸田先生から池田先生に師弟のバトンが継承された3・16「広宣流布記念の日」を迎えます。
 
名誉会長 1958年(昭和33年)の3月16日。戸田先生のもとに6000人の青年部員が集い、広宣流布の後継の式典が行われました。今年で55周年になります。そこには皆さんと同じ、未来部の世代の同志も集ってくれました。
 この師弟の厳粛な式典は、広宣流布の主体者は青年であるという大宣言でもあったのです。ずっと側にお仕えしていた私には、師の心が痛いほど分かりました。
 この戸田先生の心を受け継いで、自身の使命に目覚めた青年たちが、「人間革命」の大潮流を起こしていったのです。
 戸田先生のために、先生が願われた広宣流布のために、私たちは、どんな迫害にも負けず、どんな困難も勝ち越えてきました。これが、我らの人生の誉れです。
 御書には、「二陣三陣つづきて」(911ページ)と仰せです。
 これからの本格的な世界広宣流布を担い立つのは、君たち、あなたたちです。
 私は、今この時に、師弟の魂のバトンを、未来部の皆さんに厳然と託していきます。
 
 ──池田先生は、かつて未来部に、「自らの使命を自覚した時、才能の芽は、急速に伸びる」との言葉を贈ってくださいました。
 
名誉会長 使命とは「命を使う」と書く。生きている限り、わが命を何に使うか。追い続け、求め続け、決め続けていくのです。
 それは、遠くにあるのではない。目の前の課題に全力で挑戦していけば、いつか、自分にしかない使命が、必ず見つかる。必ず、「自分の使命は、これだ!」と分かる。だから、焦ることはありません。
 皆さんの生命には、もともと限りない前進の力、幸福の力、勝利の力が備わっています。
 だから、自身の課題に思い切って挑戦し、学び、鍛えてほしい。若い力を出し切ってほしい。
 誰が何と言おうと、私は君を、あなたを信じています。信じ抜いています。心配や不安に押しつぶされそうになったら、ありのままの自分で御本尊に祈ろう。
 もし君自身が、「もう、だめかもしれない」とあきらめそうになっても、私は絶対にあきらめません。私自身が、あきらめないで、戦い抜いてきたからです。今も戦い続けているからです。
 ゆえに、たとえ、君が、あなたが、どんな状況であっても、私はこう呼びかけるのです。
 「君なら、あなたなら、必ずできる!」
 
 松下幸之助氏のアイロンのエピソードは『松下幸之助 ビジネス・ルール名言集』、言葉はいずれも『松下幸之助 成功の金言365』 (PHP研究所刊)