小説「新・人間革命」 奮迅 16 2013年5月22日

 教学試験は、各人の教学研鑽の努力を評価し、さらに張り合いをもって精進を重ね、信心の深化、成長を図るために実施されるものである。
 したがって、その機会を、より有効に、広宣流布の前進につなげていくことが、幹部としての大事な使命といえよう。
 後輩を人材に育てるために、全力で応援し、試験に合格した人には、一段と奮起し、成長していけるように、讃え、励ますことである。
 先輩幹部が、わがことのように手を取って喜び、励ましてくれたならば、どれほど大きな意欲が引き出されるか。
 反対に、先輩が、賞讃も、激励もせず、知らん顔をしていたのでは、後輩が大飛躍できるチャンスをつぶしてしまうことになる。
 それは教学試験に限ったことではない。人材育成グループのメンバーになった人や、表彰を受けた人に対しても同様であろう。
 とともに、いや、それ以上に重要なことは、教学試験に合格できなかった人や、人材育成グループに入ることのできなかった人、実績がありながら表彰されなかった人などへの励ましである。
 組織というのは、何かを行う時、どこかで?線引き?をしなければならない場合がある。
 大切なのは、該当しなかった方々への心配り、迅速な励ましを、リーダーは決して忘れてはならないということである。
 それを忘れれば、組織主義に安住してしまい、早晩、組織から人間性は失われ、冷ややかな官僚主義に陥ってしまうことになる。
 山本伸一は、そのことを深く憂慮し、断じてそうはさせまいとの思いで語ったのである。
 「教学試験に合格された幹部の皆さんを、私は心から祝福するとともに、合格のみでは?理?であることを申し上げておきたい。
 日蓮大聖人の仏法は?事?であります。日々月々、広宣流布のために、汗まみれになって実践していってこそ、成仏につながる。
 私どもがめざすべきは、有解有信でありますが、有解無信の人よりも、無解有信の人の方が、はるかに尊いことを知ってください」