【第15回】「正義の走者」は進む! (2013.7.1)

――7月21日から「未来部躍進月間」がスタートします。「読書感想文コンクール」や「英語スピーチコンテスト」の応募も始まり、皆、決意に燃えています。
池田名誉会長 10代の夏は、まさに生命が「躍進」するチャンスです。みんなが健康で、事故なく、 挑戦の夏 充実の夏 成長の夏
を送ってくれるように、私も祈っていきます。
 
──女子未来部のメンバーからこんな質問が届いていました。「学会員は、なぜ、あんなに 『人のため』
に頑張れるのですか?未来部担当のお姉さんは、仕事で疲れているにもかかわらず、私たちに会いに来て、笑顔で励ましてくれます」と。
 
名誉会長 うれしい質問だね。
担当のお姉さんに感謝し、体調まで気づかってくれる心が、優しくて美しい。
21世紀使命会をはじめ、未来部の成長に真剣に尽力してくださる方々がいるからこそ、学会は盤石です。
担当の皆さん方が、みんなに会いに来てくれる理由、それは「真心」です。
悩みを聞いて一緒に祈りたい。
目標を聞いて、共に勝利したい。
毎日、元気でいてほしい。
日々、前進できるように応援したい……。
みんなの頑張る姿が、末来部担当者の喜びです、みんなが成長してくれれば、それだけでうれしいんだ。ホントだよ。
こうした「人のために」という真心を、仏法では「菩薩界の生命」と言うんです。
 
──仏法では、私たちの中に10種類の生命が具わっていると説かれます(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界)。
その9番目が、正しい法を求め、人のために尽くそうとする「菩薩界」という生命ですね。
現代化学の父・ポーリング博士は、池田先生がアメリカのクレアモント・マッケナ大学で行った講演「新しき統合原理を求めて」に感銘を受け、アイ・ライク・ナンバー9(私は9番目の菩薩界が大好きで)と言われていました。
 
名誉会長 そうだったね。
この「菩薩界の生命」は、題目をあげると、ぐんぐんと湧き出してくる。
ゆえに学会員は、自分が大変でも、人のために行動できる。その清らかで力強い生命を発揮して、周りの人の心を励まし、元気づけることができるのです。
日蓮大聖人は、菩薩の心を、「自分のことは差し置いても、他人のことを大事にする」「まず、周りの人を幸福にして、その後に自らの幸福を願う」(御書433㌻、趣意、「十法界明因果抄」)と教えてくださっています。
まさしく、担当者の方々の実践であると、私は讃えたい。
これは、皆さんのお父さんやお母さんも同じです。自分の時間や体を使って、人の幸福のために、祈り、語り、行動している。
時に、無理解な批判があろうとも、勇気を奮い起こして前進する。菩薩の信念が、生き方そのものになっているのです。
「自分さえよければいい」という風潮の社会にあって、これは、奇跡とも言うべき尊い姿です。
学会員こそ、「真心の勇者」なんです。
私が青春時代から愛読してきたロシアの大文豪トルストイは、自らの哲学をこう記しています。
「この人生における疑う余地のないただひとつの幸福は、他人のために生きることである」「われわれは他人のために生きたとき、はじめて真に自分のために生きるのである」
人生の真髄を表現した叫びです。今回は、この言葉を皆さんに贈りたい。
もしも、トルストイが、菩薩の道を進む創価の未来部の友と会ったならば、どれほど喜ぶことか。
 
──池田先生には、トルストイの玄孫(ひ孫の子)に当たるウラジーミル氏から、第1号の「トルストイの時代」賞が授与されています。
トルストイは、恵まれない人々に手を差し伸べた 人間愛のペンの勇者 です。 『戦争と平和』 は、世界最高峰の文学作品として有名です。
 
名誉会長 トルストイは、当時、奴隷のような扱いを受けていた農民の子どもからのために学校を創ったり、飢饉で苦しむ人々に、食糧を配るために被害地を回り、多くの給食所を設けたりするなど、民衆のために菩薩の行動を続けました。
その原点は、少年時代にあります。2歳になる前に母が亡くなり、9歳の年には父も他界しました。父母を失った彼に愛情を注いでくれたのは、遠い親せきのタチヤーナ・ヨールゴリスカヤ小母さんでした。
実の母のように深い愛情で接してくれる小母さんに、トルストイ少年は、感謝の詩をささげます。
「あなたがしてくれたことのすべてを わたしは知っています」
小母さんの「人のために」生きる心が、トルストイの一生涯の行動の力になったと、私は思う。
 
──「恩を忘れない」ということですね。ただ、「人のために行動するということは、自分を犠牲にすることなんでしょうか?」という質問もありました。
 
名誉会長 大事な問いだね。
「自分だけ」では、利己主義です。逆に「相手だけ」では、自己犠牲になる。そうではなく、自分も、相手も、一緒に喜び、成長し、幸福になっていく。これが、本当の喜びではないだろうか。
日蓮大聖人は、「喜とは自他共に喜ぶ事なり」(同761㌻、「御義口伝」)と仰せです。
「人のため」とは、相手を喜ばせてあげることです。相手が喜べば、自分も楽しい。充実がある。張り合いがある。生きがいがある。それは、自分のことしか考えてない時の喜びとは、比べものにならないほど、大きくて深い喜びなのです。
「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」──これは、私が関西創価学園生に贈った指針です。
互いに喜び、自分も他人も、大歓喜に包まれて幸福に生きる──そのために、人生はあるんです。
御書には、こうも説かれている。「人のために灯をともせば、自分の前も明るくなる」(1598㌻、通解、「食物三徳御書」)
人のためにする行動は必ず。自分のためにもなる。何よりも、自分の生命が明るく光り輝きます。
真に「人のために」生きることは、強く賢く、自分も他人も大切にしていく生き方なんです。
こうした幸福観を社会に広げているのが、私たち創価学会です。
 
──「今は、自分のことだけで精いっぱいなのに、友達のことを思えるような人になれるのでしょうか」という声もありました。
 
名誉会長 もちろん、今、皆さんにとって大切なことは、自分自身を鍛えることです。背伸びをする必要は、まったくありません。
その上で、身近なところから、自分が今できることを、無理せず行っていけばいいんです。
誰の生命にも、菩薩界があります。それが縁にふれて現れる。例えば、重い荷物を抱えているおばあちゃんを見たり、困っている友達がいたりすると、
何とか助けてあげたいな と思う。
そこには「菩薩界の生命」が輝いている。ふだんよりも、もう少しだけ勇気を出せば、慈悲(思いやり)の心は出てくるのです。
戸田先生は「慈悲といっても、なかなか出ない。慈悲に代わるものは勇気である」と言われました。
この勇気の扉を開く鍵が、妙法の題目です。「菩薩界の生命」を、いつでも、どこでも、どんな時でも、みんなの胸中から引き出してくれるのです。
 
──過日、福島県の男子高等部員が、友人と共にロボット開発のコンテストに挑みました。このチームは国内予選で1位、日本代表として6月の世界大会に出場し、各国の大学生らと競って堂々の第2位に輝きました!
彼らが考えたのは「遠隔操作のできる探査ロボット」です。原発事故を収束させるために役立つロボットを作りたい、という思いだったと伺いました。
 
名誉会長 すごいね。おめでとう! 本当にうれしい!
人の役に立とうと真剣に立ち上がる時、人間は生き生きと輝く。その「勇気」が「慈悲」となる。その「慈悲」から「智慧」が湧く。
私が対談を重ねたアメリカの大経済学者ガルブレイス博士も、「他者への思いやりこそ、人間を動かす最も大切な原動力である」と結論されています。
人のために生きる人は、その時は、苦労が多くて損をしたように見えることがあるかもしれない。
しかし、間違いなく「心の財(たから)」を積んでいるんです。絶対に幸福勝利の人生を飾ることができる。
東日本大震災で、「人のために」という生き方の尊さと誇りを、わが東北の友は厳然と示してくださった。私たちは断じて忘れません。
 
──「将来、人類に貢献する仕事をしたい」「悩んでいる友達の力になりたい」というメンバーもたくさんいます。とともに、「 『人のため』
という言葉はスケールが大きくて、具体的にどうすればいいのか、よく分かりません」との相談が寄せられています。
 
名誉会長 「どうすれば人のためになるのか」と考えること自体、偉大な人生の具体的な一歩です。
結論から言えば、仏法者である私たちは、まず、友の幸せを祈って題目をあげることができる。そこから湧きあがる勇気と思いやりの心で、友に接していくことです。
日々の生活に当てはめれば──
教室に一人でいる友達がいれば、一言。声をかけてみる。下を向いている人がいれば、笑顔で明るくあいさつしてみる。
落ち込んでいる友を励ます方法だってさまざまです。「大丈夫だよ」と言ってあげる。側にいてあげることだって、すごい支えになる。小さいことのように思えるけど、そうした真心が、実は一番、大きな力になるんだよ。
 
──この7月で「正義の走者」(現・未来部歌)が誕生して35周年を迎えます。世界のため、人類のため、青年のために行勤し抜いてこられた池田先生の後継として、未来部はこれからも、正義の道を走り抜いてまいります。
 
名誉会長 「正義の走者」が発表された時の未来部は、みんなのお父さん、お母さんたちの世代です。私は3番の歌詞に──
「花の輪広げん 走者なり
ああ柱たれ 我らの時代の」
と記しました。
末来部のみんなにも、家庭で、学校で、地威で、そして世界で、笑顔の花、対話の花、喜びの花を大きく広げていって欲しい。
そして、皆から頼りにされる、時代の柱になってほしい。これがが永遠に変わらない、私の祈りです。
 
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トルストイの言葉』 (小沼文彦訳、彌生書房刊)、トルストイ 『文読む月日(上)』 (北御門二郎訳、筑摩書房刊)、 『トルストイの生涯』
(人見楠郎、小波宏全、油屋みゆき編)、 『トルストイ研究』 (法橋和彦編、河出書房新社刊)を参照した。