【第20回】 御書があれば負けない   (2013.12.1)

「心に刻む御文」を持とう!
20世紀ロシアを代表する文豪 ショーロフ氏
大事なのは、その人の信念です。ある目的へ向かって、その人が目指していく力です。信念のない人は、何もできやしません。
 ──11月24日に「教学部任用試験」が行われました。多くの高等部員も真剣に挑みました。
名誉会長 ご苦労さま! 勉強やクラブ活動など、忙しい中、本当によく頑張ったね。何よりも尊く、誇り高い挑戦です。
 世界第一の生命哲学を学んだこと、それ自体が、自身の光り輝く歴史です。
 これからも、「行学の二道をはげみ候べし」 (御書1361㌻)の仰せを胸に、共々に、祈り、学び、実践していこう。全員が「信心の勝利者」になり、「幸福と平和の博士」になっていこうよ!
 受験者を励まし、応援し、教学を教えてくれた担当者の皆さん、本当にありがとうございました。
      
 ──未来部には、地域の座談会などで、「大白蓮華」の「巻頭言」や、「少年少女きぼう新聞」の「師子王《ライオンキング》御書」を拝読してくれるメンバーが多くいます。ある友からは、「学会の会合では、なぜ、いつも御書を学ぶのですか」という質問が届きました。
名誉会長 よく気がついたね!
 学会は常に「御書根本」で前進しています。御書には、人生を切り開く勝利の哲学があります。最高の智慧の泉があり、不屈の勇気を呼び覚ます力があるんです。
 私の恩師・戸田城聖先生は、数学の天才でした。その先生がよく"「信」は「理」を求め、「理」は「信」を深める"と指導されていました。
 「信心」に励んでいくと、「なぜ願いはかなうのか」「どうして題目を唱えるのか」という疑問がわき、「理論」が知りたくなる。その時に御書を学べば、「なるほど、そういうことか」と納得が生まれる。その「理論」が、「信心」をさらに深めてくれるんです。
 日蓮大聖人は、「法華経の文字は一字一字が全て仏です。しかし、私たちの肉眼には、ただの文字と見えるのです」(同1025㌻、趣意)と教えてくださっています。
 題目を唱えつつ御書を拝していけば、全ての文字が「仏の力用《りきゆう》」となって、皆さんの若き生命にグングンと吸収されていくんです。
 御書には、断固として正義を貫き通す「信念」が光っています。どんな苦難も必ず乗り越えられるとの「確信」が満ちています。そして、生きていること自体が楽しいと感じられる「絶対的幸福」の道が示されています。
 ゆえに、御書を学べば、断じて負けない師子王になれる。友に希望を贈る太陽になれる。世界平和を創る賢者になれるのです。
      
 ──「御書は古文だし、内容も難しい」という声もあります。
名誉会長 そうだね。私も、若き日の日記に「御書を拝読。全く難しい」「教学の度に思うことは、勉強不足である。勉学の必要を、深く深く感ずる」と書いた思い出があります。
 それでも、戸田先生のもとで、必死に学んだ。先生の名代として、御書講義を何度も行いました。疲れ切った体で家に帰った後も、必ず御書を開き、心に残った一節を、日記に認《したた》める習慣も身につけました。
 不思議なもので、若い時に生命に刻みつけた御書は、生涯、忘れません。最初は意味が分からなくても、だんだん分かってきます。
 今、世界中の友が求道心に燃えて教学に挑戦しています。
 たしかに古文は難しいけれど、海外のメンバーから見ると、御書を日本語で声に出して拝読できる皆さんは恵まれているのです。
 みんなは、学校でも古文に触れる機会があるからね。それは、御書を学ぶ力にもなる。また御書を学ぶことが、古文を勉強する際の力にもなる。
 そのうえで、大切なことがあります。頭で法理を理解し、納得することは、もちろん大事です。それ以上に重要なこと──それは、御書を「心に刻む」「身で拝する」ことです。
 ──これは、メンバーのご家族や、地域の創価家族の方々が実践していることですね。
名誉会長 その通りだね。みんなのお父さん、お母さん方は、御書の通りに実践し、大聖人の御精神を現代によみがえらせているんです。
 試練にぶつかった時には、「なにの兵法よりも法華経の兵法をもちひ給うべし」(同1192㌻)との一節を思い出し、"そうだ、策ではない。今こそ唱題だ!"と勇気を奮い起こして、勝ち越えてきた同志の方々がたくさんいる。
 "自分なんて"と弱気になっていた時に、「成仏の『成』とは開く義である」(同㌻、通解)という一節を教わり、自身の無限の可能性を開き、成長していった人も、いっぱいいる。
 一節でもいい。その一節を抱きしめながら、必死に祈り、努力を重ねていけば、青春も人生も、絶対に開ける。
 そして、「御書の通りにすれば、必ず勝てる」「この信心は、すごい」と心から確信できる。それが「心に刻む」「身で拝する」ということです。
 その一節が、君の信念になる。
 その一節が、あなたの生き方になる。
 「大好きな御書の一節」を持つ人は強いんです。苦難にあっても、無敵になるんです。
 いい機会だから、家族や先輩に、「好きな一節は何?」と質問してみてはどうかな。きっと、体験をまじえて、教えてくれるよ。
      
 ──それは、一人一人の人生の誉れある信念の御聖訓ですね。
名誉会長 私が初めてロシアを訪問した折(1974年)、作家のミハイル・ショーロホフ氏(1905~84年)と語り合いました。その折の氏の言葉が忘れられない。
 「大事なのは、その人の信念です。ある目的へ向かって、その人が目指していく力です。信念のない人は、何もできやしません」
 今回は、この言葉を贈ります。
 人は名誉や地位で偉いのではない。偉大な信念を持った人が、真に偉大な人です。妙法の信仰は「究極の信念」の道なんです。
 ──ショーロホフ氏は、ノーベル文学賞を受賞した、20世紀ロシアを代表する文豪です。代表作は『静かなドン』『人間の運命』。
 池田先生は、お孫さんとも麗しい交流を結ばれ、氏の生誕100周年を慶祝する「記念メダル」が贈られています。
名誉会長 庶民の中に入り、歴史の大河を描き続けた偉大な文豪でした。いかなる中傷も、苦難も、信念で乗り越えてこられた獅子です。
 ロシア南部のドン地方のさびれた村で生まれ育ち、激しい戦争のゆえに中学を卒業できませんでした。戦争が終わり、17歳になった氏は、勉強するためにモスクワに行きます。ところが、学校に入ることができず、厳しい労働で生活費を工面しました。
 それでも、氏は負けませんでした。独学で学び、作品を書き、同じ夢を持つ友と語り合いました。そして、18歳で、自分の書いた作品が初めて活字になり、世に出たのです。
 氏の向学心や創作意欲を高めてくれたのは、偉大な作家の作品でした。トルストイチェーホフプーシキンゴーリキーゴーゴリなど、先人の言葉が逆境の氏を励まし、燃え上がらせたのです。
 いかにつらい環境でも、学び抜き、希望の光を見いだし、成長の活力に変えていく──まさに、「学は光」です。
      
 ──ある男子部のリーダーは、幼いころから両親のけんかが絶えず、生活も苦しかったといいます。高校生のころから荒れて、遊び回る毎日を送るようになりました。
 高校3年生の時、未来部の担当者が家にやってきます。彼は拒否しますが、何度も何度もやってくる(笑い)。
 その時に教わったのが、「冬は必ず春となる」(同1253㌻)の一節でした。心に希望の火がともりました。
 その後、真剣に信心に取り組んでいきます。そして、自分の宿命を、友を励ます使命に変えながら、社会で実証を示してきました。今は一家の和楽も勝ち取り、喜びの「春」を実感しています。
名誉会長 うれしいね。担当者の方の決してあきらめない真心の激励も、本当にありがたい。
 いかなる不幸の闇も照らす希望の光こそ、御書です。全国の学会員、そして全世界のSGI(創価学会インタナショナル)メンバーの躍動する姿が、それを証明しています。
 みんなも、これから先、さまざまな悩みの壁に突き当たることでしょう。「祈っているのに、なぜ?」「どうして願いがかなわないの?」と、疑問に思ってしまうことも、あるかもしれない。
 その時こそ、御書を開くんです。御書を拝し、学ぶことは、日運大聖人の大生命に触れることです。勇気がわかないはずがない。無限に智慧がわき、大いなる希望がわく。
 そして、誓いも新たに、題目を唱え、現実に立ち向かっていくんです。
      
 ──「池田先生の好きな御書は何ですか」という質問も寄せられています。
名誉会長 たくさん、あります。「座右の御書」の一つに、戸田先生から、「この御書は、絶対に命に刻んでおけ。学会の闘士は、この一節を忘れるな!」と教わった「御義口伝」の一節があります。
 「一念に億劫の辛労を尽せば本来無作の三身念念に起るなり所謂南無妙法蓮華経は精進行なり」(同790㌻)
 「本来無作の三身」とは、自身にもともと具わっている仏の生命です。その生命を、瞬間、瞬間、開き現していくためには、一念に「億劫の辛労」(無限ともいうべき長い間にわたる辛労)を尽くすしかない。私たちが題目を唱えて戦うことは、その「億劫の辛労」に匹敵する勇気と智慧を尽くしていることになるのです。
 私は、どんな戦いであっても、この御文を支えにしてきました。一瞬に永遠を凝縮するような思いで唱題し、全てを乗り越え、勝ち越えてきました。
 また、あの地、この地で、皆さんのご家族と共に拝してきた、「開目抄」の一節も大好きです。
 「我並びに我が弟子・諸難ありとも疑う心なくば自然《じねん》に仏界にいたるべし」(同234㌻)
 正しいからこそ難にあう。ゆえに何があっても疑わず、いよいよ信心を燃え上がらせて、前進し抜いていけば、必ず変毒為薬できる。
 我並びに我が弟子──師弟です。師弟が同じ誓いに立てば、突き抜けられない悩みなどない。確実に栄光のゴールにたどり着くことができる。
 この御文を根本に、学会は大発展してきました。創価の師弟は、一切に勝利しました。
 これからも、ますます大勝利していくんです。
 さあ、世界広布の新時代がやってきました。
 次代を開く、未来の主役であるみんなが、御書という最強の哲学を携えて、世界平和の舞台へ躍り出て大活躍することを、私は祈り、待っています!
 『ショーロホフ短編集』(小野理子訳、光和堂刊)、『筑摩世界文學大系76 ショーロホフ1』(江川卓訳、筑摩書房刊)、『ショーロホフと現代』(F・ビリュコーフ編、秋山勝弘訳、横田瑞穂監修、プログレス出版所刊)を参照した。