激闘56  2014年5月27日

山本伸一は、九州最高会議に続いて、視察のために、福岡市西区(現在の早良区)の九州記念館(現在の福岡平和会館)に立ち寄った。
時刻は、既に午後八時であった。
彼は、同行の幹部から、福岡圏・別府支部の体験談大会が行われていることを聞いた。
「体験談大会ですか。大事だね。仏法のすばらしさを示すうえで、体験に勝るものはありませんから。
体験と聞くと、信心によって、赤字だった会社の収益が何倍にもなったとか、病気を克服したという話を思い浮かべがちですが、それだけではないんです。
ご主人が病に倒れていても、奥さんが強い心で奮闘し、明るく頑張っているということも、見事な体験です。八十代になって腰も曲がり、耳も遠くなっているが、日々、生き生きと、楽しく学会活動に励んでいるということも、すごい体験ではありませんか。
仏法の偉大さは、それぞれの生き方、考え方、人生観、死生観などにも表れます。それをそのまま語ることが、実は、仏法の証明になるんです。
せっかく記念館におじゃましたんだから、皆さんにお会いしていこう!」
伸一は、疲れを覚えていた。しかし、皆に会わずに帰ることを、自らが許さなかった。
彼は、体験発表が一段落するのを待って、会場に姿を現した。思いがけない山本会長の登場に、大拍手と大歓声が起こった。
「本日は、大変におめでとうございます。
皆さん方が体験談大会をされているので、ご迷惑にならないように、そっと帰ろうと思っていたんです。
しかし、やはり、ごあいさつに伺うべきではないかと思って、おじゃました次第です。
時間があまりないものですから、ピアノを弾いて、御礼とさせていただきます」
こう言うと、彼はピアノに向かい、「月の沙漠」や「さくら」などを演奏していった。
その音律から、参加者は、伸一の真心を、真剣な励ましの思いを感じ取っていった。