小説「新・人間革命」広宣譜27 2014年 12月18日
関西広布の歩みは、疾風怒濤と絢爛たる勝利に彩られてきた。
また、同年七月、伸一が支援の責任者となった参院選では、当選は不可能との大方の予想を覆し、一般紙が「『まさか』が実現」と報じるほどの、奇跡的な大勝利を果たしたのである。
この支援活動では、選挙法の知識に乏しく、熱心さのあまり選挙違反をした会員が
出てしまった。
逮捕・勾留は十五日間に及んだ。過酷な取り調べが続き、検事は、遂に脅迫まがいのことまで言い始めた。
伸一が罪を認めないのならば、会長の戸田城聖を逮捕すると言うのである。
五七年の七月といえば、戸田の逝去の九カ月前であり、衰弱は既に激しく、逮捕は死にもつながりかねなかった。
伸一はやむなく、ひとたびは一身に罪を被って、法廷で真実を明らかにしようと、心を決めたのだ。
民衆勢力の台頭を恐れる権力の魔性が、獰猛なる牙を剥いて、学会に襲いかかってきたのである。
正義は勝つ。いや正義なればこそ、断じて勝たねばならなかった。
七月十七日正午過ぎ、大阪拘置所から彼は釈放された。
川の対岸には、大阪地検のある建物が見える。
諸天の憤怒か、慟哭か、稲妻が雲を引き裂き、雷鳴が轟き、大粒の雨が降りだした。