小説「新・人間革命」広宣譜48 2015年1月17日
山本伸一は、列車が走りだすと、「中国の歌」の歌詞を読み返し、推敲し始めた。
彼は、この歌を、広宣流布の情熱がほとばしる力強いものにしたかった。
一番の「ああくれないの あの友と」の箇所では、燃え立つばかりの、はつらつとした中国の同志の姿を描きたかった。
思索の末に、「ああ紅に 友は燃え」となった。
二番の二行目は、「友どちの」となっていたが、そこは、「友どちと」とした。四番の最後も、「歴史あり」を、「歴史輝く」に直した。
車窓には緑したたる山々が迫り、高梁川の清流が白い飛沫を上げながらうねっていた。
数カ所を手直しした伸一は、「続きはあとにしよう」と言って、歌詞を封筒に入れた。
同行していた妻の峯子は、ほっとした表情を浮かべた。
休みも取らずに作詞を続ける伸一が、心配でならなかったのである。数日前から、彼は体調を崩していたのだ。
だが、決意のこもった声で、彼は言った。
「これから、『四国の歌』を作ろう!」
中国に続いて訪問する四国では、「四国の歌」を発表したいと考えていたのだ。
伸一は、近くの席に座っていた、副会長で四国総合長の森川一正に語りかけた。
「四国は、今、大発展を遂げようとしている。
香川と高知には研修道場も誕生し、各県にも、次々と立派な大会館
が整いつつある。
皆、満を持して、新しい船出を待っている。
広布第二章の新しい担い手も、四国から出ると私は確信している。
四国の皆さんも、宗門のことで、大変な思いをされてきた。
しかし、これを乗り越えれば、皆がもっと強くなれる。
何があっても微動だにせぬ力をつけて、時代を変えていくんだ。