小説「新・人間革命」大道 37 2015年3月25日

東濃の同志に見送られ、車で東濃文化会館を出発した山本伸一は、深くシートに体を沈めた。
隣に同乗していた峯子が、伸一の顔に心配そうに視線を注いだ。
「大丈夫だよ。心配ないさ。まだまだ、力はあふれている。名古屋の名東区に、レストランを経営されている学会員がいたね。
そこにおじゃましよう。少し遅くなったが、皆で夕食を食べながら、夫妻を激励しよう」
ここでも、伸一の励ましは続いた。
「妙法を持って、懸命に広宣流布に戦っている人は、仕事の面でも、成功することは間違いありません。
どんなに忙しくとも、信心だけは、『真面目に! 真面目に! 真
面目に!』――これでいくんです。これしかありません。
長い目で見た時には、適当に手を抜いてきた人と、真面目に戦い抜いてきた人との差は、怖いほど明らかです」
レストランでの激励を終え、中部文化会館に到着したのは、午後十一時過ぎであった。
名古屋滞在最終日の二十九日、伸一は、午前中、同志に贈る励ましの揮毫をしたあと、「東京の歌」の推敲に取りかかった。
午後には、中部の代表幹部と勤行し、懇談しながら、指導、激励を重ねた。
「今が正念場だよ。今こそ、仏意仏勅の誉れある創価の大道を、師弟の大道を貫き通していくんです。
広宣流布の攻防戦は、常に熾烈です。過酷です。大変かもしれないが、私は戦います。
わが愛する同志を守り抜きます。そのためには体も張ります。命も懸けます。それが会長です。また、それが幹部ですよ」
伸一の真情であった。
その後、会館周辺に居合わせた同志を次々と激励。さらに、午後六時過ぎ、東京に戻る直前に、「中部文化会館で、北名古屋圏の合唱祭が開催されます」と聞いた彼は、急遽、立ち寄り、開幕前のひと時、共に唱題して、マイクに向かった。
「『潔い信心』と『美しい友愛と団結』をモットーに前進していこうではないですか!」
戦いとは、生命を燃やし尽くすことだ。