小説「新・人間革命」大道 38 2015年3月26日

山本伸一が「激闘」と「力走」の歴史を刻んだ「青年の月」七月は終わり、「錬磨の月」八月が幕を開けた。
一日の夕刻、伸一は、駐日アメリカ大使のマイケル・マンスフィールド夫妻らと、東京・信濃町聖教新聞社で会談した。
席上、この年五月に、伸一が初の国連軍縮特別総会を前に、国連事務総長、国連総会議長に書簡で送った、核軍縮及び核廃絶への提唱が話題に上った。
提唱は、次の十項目から成っていた。
1. 全世界各国の最高責任者が一堂に会する「全世界首脳会議」の開催。
2. 核エネルギーの国連による管理化。
3. すべての国に核兵器不使用を義務づける協定の締結。
4.「非核平和ゾーン」の設置と、その領域拡大の推進。
5.国連の仲介による「核軍縮首脳会議」の具体化。
6.勇新型兵器開発の停止。
7.「国連軍縮機関」(仮称)の設置。
8.全面完全軍縮へ向けての民間レベルでの研究、討議、広報、出版活動の推進。
9.国連に「平和のための資料館」(または仮称「国連平和館」)の開設。
10.国連内に仮称「軍縮のための経済転換計画委員会」を組織化。
 
さらに、伸一は、こうした国連の機能強化を可能にする前提として、国連の経済的基盤を強化するとともに、事務総長らは「完全なる政治的非同盟宣言」などを行い、政治的不偏性を確立すべきであると提言していた。
マンスフィールド大使との会談では、これらの提唱をめぐっても意見が交わされ、平和への思いを確認し合う語らいとなった。
伸一は、会員を守るために、宗門の問題に神経をすり減らしていた。
しかし彼の眼は、人類の幸福と平和の実現から、決してそれることはなかった。
戦争を、人びとの不幸を、この世からなくすために日蓮仏法はある。それこそが、本来、宗教の原点であるはずだ。