小説「新・人間革命」大道 51 2015年4月10日

山本伸一は、この八月六日の午後、東京・信濃町聖教新聞社で原稿を書いたあと、カメラを持って外に出た。
前庭で何枚か写真を撮っていると、創価女子会館での勤行会に参加した、三十人ほどの東北の女子部と出くわした。
新聞社の見学に来たようだ。
「みんな、どこから来たの?」
伸一が尋ねると、皆が口々に答えた。
「秋田です!」
「そうか! 秋田からか。よく来たね」
女子部の一人が言った。
「先生! 東北の方面歌『青葉の誓い』を作ってくださり、ありがとうございました」
「皆さんのことを思いながら作りました。
秋田は、宗門の問題でも苦労しているね。大変だろうが、何があっても負けてはい
けないよ。私たちは、大聖人の仰せ通りに信心に励んでいる。その広宣流布の火を消すわけには、絶対にいかないもの。
女性には、悪の本質を鋭く見抜く信心がある。それが、民衆を守る力となる。
皆さんは『東北の凱歌の人々』の先駆けだ。清らかに、聡明に、正義の旗を握り締めて、幸せの王女として生き抜いてください。
記念だから、今日は、私が皆さんの写真を撮って差し上げましょう」
歓声があがった。
聖教新聞社前庭の植え込みをバックに、メンバーが並んだ。
伸一は、カメラのシャッターを切った。
「では、またお会いしよう。秋田にも、必ず、お伺いします!」
夕刻、彼は、創価女子会館で行われた、アメリカのメンバーの研修会に出席した。
指導を終えた伸一のもとに、東北女子部長の大池憲枝らが、歌の御礼にやって来た。
「皆、大喜びで、『青葉の誓い』を覚え、東北各地に戻っていきました」
「女子部の会合で発表したことに意味があるんです。女子部の皆さんに『新生・東北』の光となってほしいからです。
女子部の歌声と笑顔は、創価の希望であり、力なんです」