小説「新・人間革命」大道 53 2015年4月13日

山形県置賜地域では、宗門の僧による学会への中傷の嵐が吹き荒れていた。
この一九七八年(昭和五十三年)が明けた一月の御講から、住職による学会批判が始まり、月を経るごとに激しさを増していった。
一方的に、「学会は、とんでもない謗法を犯している」などと声高に叫び、学会をやめて檀徒になれと言うのだ。
学会員が腹に据えかね、途中で席を立とうとすると、「誰だ! 立つのは! 最後まで話を聞きなさい!」と怒鳴り、反論も許さず、誹謗し続けるのだ。
住職の話に動揺し、「学会をやめたい」と言いだした壮年がいた。
心配した地元の幹部が、話を聞きに行った。壮年は、ただ、「学会は間違っている」と繰り返すばかりであった。
「どこが、どう間違っているんですか」
幹部の問いに、「俺じゃあ、わからないから、住職に聞いてくれ」と言って、寺に電話を入れた。
しばらくして、やって来た住職は、自信満々に語った。
「間違っている証拠は、ここにある!」
鬼の首でも取ったように、開けた鞄から出てきたのは、ほとんどが週刊誌であった。
正邪判別の根本は、御書ではなく、学会に嫉妬する輩が悪意で流す、デマ情報の週刊誌の記事であったのである。
学会の幹部は、あきれ返り、失笑してしまった。
また、「脱会しなければ葬儀にも、法事にも行かない。
納骨の受け付けもしない」と言われ、泣く泣く退会手続きを取った老婦人もいた。
それを耳にした同志は、直ちに激励に訪れ、「私たちに信心を教えてくれたのは、学会ではないですか!」と懸命に訴え、再起を促すのであった。
毎日が苦闘であった。しかし、同志は挫けなかった。
「今こそ、自分が立つのだ!」と闘魂を燃え上がらせた。烈風なくして上昇はない。苦難が自分を磨き、鍛える。
「一つの苦闘は一つの勝利でありました」とは、ヘレン・ケラーの魂の叫びである。