小説「新・人間革命」 勝利島 37 2015年9月2日

 
派遣された幹部が、山本伸一の伝言を語るにつれて、伊豆大島の同志の目は潤み始め、その顔は紅潮していった。
「先生は、また、こう言われました。
伊豆大島に会館を建設したいと思う。
島の同志の方々が希望に燃えて、元気に頑張っていけば、島は必ず復興し、ますます繁栄していく。
その原動力となるよう、会館建設を進めていきたい』」 
話が終わらぬうちに、大きな拍手が起こった。
参加者は肩を抱き合って喜んだ。
座談会の空気は一変していた。
皆、口々に、決意を語り合った。
「この災難を、大島の大発展のバネにしていこう! 今こそ、仏法を持った者の強さを示していこうじゃないか!」
「そうだね。島のみんなは、希望をなくしている。
励まし、元気づけよう! そして、信心をすれば、どんな苦難も必ず克服していけることを、訴え抜いていくんだ」
「それが大事だと思う。この大火を変毒為薬していく道は折伏だ。
島中に、弘教の大旋風を巻き起こしていこう!」
皆の胸に、闘魂が燃え上がった。
戸外には、月明かりの下、焼け跡が黒々と広がり、吹き渡る風も焦げ臭かった。
しかし、同志は、清新な建設の息吹を胸に、この夜から喜々として仏法対話に走った。
焼け出された学会員には、「これから先、どうすればよいのか」という強い不安があった。
しかし、「友の再起のために、仏法を語ろう」と、弘教を開始すると、いつの間にか、自身の悩みの迷宮から脱していた。
「必ず乗り越えてみせるぞ!」という固い決意と、「絶対に乗り越えられる!」という強い確信が、胸に込み上げてくるのだ。
境涯革命の直道は、弘教にこそある。
大島の同志は、話し合いを重ね、会館が完成するまでに、会員千世帯をめざそうと誓い合った。
誰もが意気盛んであった。
元町に建てられた被災者のプレハブ住宅では、同志の唱題に力がこもった。