小説「新・人間革命」 勝利島 53 2015年9月22日
高校二年、中学一年、小学五年生になる三姉妹である。
菊田秀幸は、中学校の教員をしていた。
山本伸一は、彼の娘たちに、パンを渡し、ジュースを勧めながら、今日は、どこに宿泊するのかを尋ねた。
「おばちゃんの家です」
末娘が答えると、母親の淳子が、「主人の姉の家です」と説明した。
伸一は、末娘に聞いた。
「おばちゃんに、お土産は?」
娘は首を横に振った。伸一は、「それでは、これをおばちゃんに」と言って、会員への激励のために用意していた菓子折を渡した。
秀幸は、宿泊場所や宿泊先への土産まで気遣ってくれる伸一の真心に、胸が熱くなった。
伸一は、菊田フジ子に言った。
「あなたが苦労して戦われてきたことは、よく知っています。
鼓笛隊も誕生しましたね。本当にすごいことです」
伸一は、機関紙誌に離島が取り上げられると、克明に目を通し、島の様子を心に刻んできた。
彼の言葉に力がこもった。
「組織が発展し、皆が功徳を受けていくならば、それは、草創期に道を切り開いてきた人に、全部、福運となって回向されます。
大聖人は『功徳身にあつまらせ給うべし』(御書一二四一㌻)と仰せです。
苦労を重ねて広布の大地を開墾し、妙法の種を蒔いた人を、諸天は永遠に大絶讃してくださるんです」