小説「新・人間革命」 勝利島 55 2015年9月24日

カセットデッキから、「龍郷支部歌」が流れた。勇壮で力強い調べであった。
臥龍(がりょう)が時を待って、天空高く昇りゆく姿に、同志の心意気を託した歌となっていた。
山本伸一は、調べに合わせて、拳を振りながら、歌を聴いていた。
聴き終わると、彼は言った。
「いい曲だね。龍郷の新しい出発だね。
支部の皆さんは、元気かな」
すぐに、奄美の婦人の幹部が答えた。
「はい。今は、地域の人たちも、心から学会を理解してくれています。
また、多くの同志が、各集落の信頼の柱になっています」
「それは、よかった。何よりも嬉しいね。日蓮大聖人の仏法というのは、最も苦しんできた人が、最も幸せになれるという教えなんです。
また、最も激しい迫害が起こったところこそ、学会員が信頼の根を張り、広宣流布の模範の地域にしていく使命があるんです。
大聖人は、一生のうちに自身の一切の謗法を消滅できるのは、法華経のゆえに数々の大難に遭ったからであると言われている。
そして、 『願(ねがわ)くは我を損ずる国主等(ら)をば最初に之(これ)を導かん』(御書509㌻、「顕仏未来記」)と仰せです。
その原理のうえから、弾圧の嵐が吹き荒れた地で戦ってこられた奄美の皆さんは、地域広布の先駆となって、人びとを幸せにしていってほしいんです。
龍郷をはじめ、奄美の皆さんは勝った! 仏法は勝負です。十年、二十年、三十年、いや五十年とたった時に、すべては、ますます明らかになる。
勝負は一生です。
より根本的には、三世という尺度で見なければならない場合もありますが、最後の大勝利を確信し、不退の勇者として生き抜いてください。
それには、心が強くなければならない。
臆病では信心を全うすることはできません。
大試練に耐えるとともに、自分の慢心や名聞名利への執着などに打ち勝つ強さが必要です。
学会を離れれば、最後は後悔します。孤独です。
広宣流布の陣列から離れることなく、はつらつと歓喜の大行進を続けてください」