小説「新・人間革命」 勝利島 57 2015年9月26日
会場は、全国百二十の島々から集った代表で埋まり、求道の熱気に包まれていた。
皆、固唾をのんで開会を待った。
午後六時前、会場横の扉が開いた。皆の目が一斉に注がれた。
伸一の姿があった。参加者の大拍手と大歓声が轟いた。
「ようこそ! ようこそ!」
伸一は、こう言いながら、参加者の中を進み、後方へ向かった。
旧習の深い島々で戦い抜いてきた同志を、少しでも間近で激励したかったのである。
声をかけ、握手を交わし、場内を進んだ。
「遠いところありがとう! よくいらっしゃいました。お会いしたかった」
伸一と初めて会う人が、ほとんどであった。立ち上がり、手を振る人もいる。
労苦の波浪を乗り越えてきた勇者の心意気と、仏子を讃え励まそうとする伸一の思いが熱く解け合い、会場は感動の坩堝となった。
彼は、場内を一巡し、前方に来ると、マイクを手にした。
「離島本部の第一回総会、おめでとう! 日々、苦闘を重ね、勝利の旗を打ち立ててこられた皆さんと、お会いできて本当に嬉しい。
学会本部は、皆さんの家です。
今日は、信心のわが家に帰って来たんです。堅苦しいことは抜きにしましょう。
ゆっくりして英気を養い、“ああ、本部に来てよかったな”と心から満足して、若返って、お帰りになっていただきたい。
それが、私の思いのすべてなんです。戦い抜いてこられた皆さんですもの」