小説「新・人間革命」 勝利島 57 2015年9月26日

一九七八年(昭和五十三年)十月七日、山本伸一は、離島の婦人部の代表らと懇談したあと、第一回離島本部総会の会場である創価文化会館五階の広宣会館へ向かった。
会場は、全国百二十の島々から集った代表で埋まり、求道の熱気に包まれていた。
皆、固唾をのんで開会を待った。
午後六時前、会場横の扉が開いた。皆の目が一斉に注がれた。
伸一の姿があった。参加者の大拍手と大歓声が轟いた。
広島の江田島能美島倉橋島の同志が立ち上がり、島をアピールする五メートルほどの横幕を広げ、喜びを表現した。
「ようこそ! ようこそ!」
伸一は、こう言いながら、参加者の中を進み、後方へ向かった。
旧習の深い島々で戦い抜いてきた同志を、少しでも間近で激励したかったのである。
声をかけ、握手を交わし、場内を進んだ。
「遠いところありがとう! よくいらっしゃいました。お会いしたかった」
黒潮に磨かれた精悍な顔、風雪に鍛え抜かれ、深い年輪を刻んだ顔、笑みを浮かべた柔和な顔――どの顔も、見る見る歓喜に紅潮していった。
伸一と初めて会う人が、ほとんどであった。立ち上がり、手を振る人もいる。
労苦の波浪を乗り越えてきた勇者の心意気と、仏子を讃え励まそうとする伸一の思いが熱く解け合い、会場は感動の坩堝となった。
彼は、場内を一巡し、前方に来ると、マイクを手にした。
「離島本部の第一回総会、おめでとう! 日々、苦闘を重ね、勝利の旗を打ち立ててこられた皆さんと、お会いできて本当に嬉しい。
学会本部は、皆さんの家です。
今日は、信心のわが家に帰って来たんです。堅苦しいことは抜きにしましょう。
ゆっくりして英気を養い、ああ、本部に来てよかったなと心から満足して、若返って、お帰りになっていただきたい。
それが、私の思いのすべてなんです。戦い抜いてこられた皆さんですもの」