小説「新・人間革命」 力走33 2016年5月2日

高知は近代日本へ歴史回天の大波を起こした人材の天地である。
また、広宣流布の歴史にあっても、高知には、根深い旧習のなか、来る日も来る日も、折伏・弘教に歩き、茨の道を切り開いてきた、“魁光る”民衆革命の軌跡がある。
島寺義憲は、学生時代に高知を訪れて以来、この県に強い憧れをいだいていた。
荒波躍る雄大な太平洋。清流をたたえた美しき四万十川、そそり立つ緑の山々。
そして、坂本龍馬板垣退助ら近代日本の夜明けを開いた逸材たち。
また、「いごっそう」といわれる、信念を曲げない高知県人の気質――すべてに魅力を感じた。
島寺が高知県長の任命を受けた時、山本伸一は言った。
「若い幹部が、見ず知らずの地に県長として行くんだから、“俺は県長だ”などと偉そうな態度をとってはいけないよ。
高知の幹部の人たちは、何十年も地元に暮らしているし、年齢的にも先輩なんだ。
“教えてください”という姿勢で、謙虚に臨むことです。
それを、はき違えて、役職、肩書があるから自分が偉いかのように錯覚し、威張ってしまえば、誰もついてきません。
心の底から皆を尊敬し、周囲の人が、あの県長を応援しようと思ってくれるリーダーになるんだよ。
もう一つ大事なことは、一人ひとりとつながっていくことです。
皆さんのお宅を、一軒一軒、徹して回って、友人になるんだ。
また、青年や若手の壮年を育成し、人材の次の流れをつくっていくことです。
将来の中核となるメンバーを十人か二十人ぐらい集めて、御書の講義や研修会を行ってもいいだろう。
ともかく、後に続く人たちには、信心の基本、幹部のあり方の基本を、しっかり教えるとともに、創価の心、学会の精神を、きちんと伝え抜いていくんです」
いかなる団体であれ、“基本”と“精神”の継承は、永続と発展の生命線である。そのうえに、時代に即応した知恵が発揮され続けていってこそ、永遠の栄えがある。