小説「新・人間革命」 力走43 2016年年5月14日

高知研修道場では、地元の幹部らが山本伸一たちの到着を待っていた。
こんな遠くまで、本当に山本先生が来てくださるのだろうか……
彼らは、伸一が中村駅から車に乗り、研修道場へ向かったという連絡を受けても、まだ、信じられない思いがするのだ。
研修道場がある土佐清水市をはじめとする幡多地域でも、多くの会員が宗門僧の非道な仕打ちに耐えてきた。
そのなかで同志たちは、伸一の研修道場訪問を目標に、互いに励まし合いながら進んできたのである。
午後七時を回ったころ、ヘッドライトの光が走り、数台の車が研修道場に到着した。
「いやー、さすがに遠いね。とうとう来ましたよ。お世話になります!」 伸一の声が響いた。
「先生! ありがとうございます……」
「もう、大丈夫だよ。私が来たんだから、安心してください。一緒に、新しい出発をしようよ」
その言葉を聞くと、地元幹部は、喜びに胸が熱くなり、言葉が途切れた。
玄関の横には、ピンク色の花を咲かせた山茶花の木々が植えられていた。伸一は、その木を見ると、こう提案した。
「きれいに咲いているね。庭の手入れをしてくださっている方の真心が胸に染みます。ここを『山茶花庭園』としてはどうですか。
また、せっかく木を植えたんだから、高齢の功労者から十人を選んで、その方々の名前を、それぞれの木につけませんか。
そして、木の横に名前を書いて、功労を讃えていくんです。
悔し涙をこらえながら、懸命に広布の道を開いてこられた勇者たちだもの」
それから、森川一正や島寺義憲ら四国、高知の幹部に言った。
「幹部は、励ましに徹することです。 どうすれば、広宣流布のために苦労し、頑張ってこられた方々が喜んでくださるのか。その功労に報いることができるのか──と、常に考え続けていくんです」