小説「新・人間革命」 清新41 2016年年8月2日

山本伸一は、青森県新春記念指導会で、こう話を締めくくった。
「今はまだ、青森の冬は厳しい。しかし、凍てる雪の下で、既に若芽は萌え出る準備をしているんです。
御金言のごとく、冬は必ず春となります。
そして、風雪の辛さを知るからこそ、春を迎えた喜びは大きい。
苦労に苦労を重ねて広宣流布の道を開いてこられた皆さんには、最も幸福になる権利があるんです。
皆さんが幸福に満ちあふれた、希望輝く清新の春を迎えることは明らかです。
どうか、御本尊の功徳に浴し、立派な人間革命の姿をもって、晴れ
やかな人生を送られるよう念願し、あいさつといたします」
大きな、大きな拍手が広がった。皆、歓喜に頬を染め、瞳を輝かせながら、新しい出発の決意を固めたのである。
伸一は、直ちに、会場の広間に入りきれなかった人たちのもとへ向かった。
廊下で、ロビーで、参加者に声をかけ、握手を交わした。時として、体はもみくちゃにされた。
しかし彼は、一人ひとりの同志の発心と人生の勝利を願って、全力で励まし続けた。
さらに、夕刻には、オーバーを着て、毛糸の帽子をかぶり、小雪の舞うなか、会館の周辺を回った。
あちこちに、何人もの学会員がいた。路上で激励の対話を重ね、そして、県幹部らとの懇談会に出席したのだ。
一月十六日、伸一が東京に戻る日だ。雪はやんでいた。見送ってくれた青森の代表のメンバーに、彼は言った。
「また、必ずまいります。その時には、奥入瀬の研修道場にも行きます。奥入瀬の滝のように、清冽な信心を貫いていこうじゃないですか。広宣流布の総仕上げを頼みます」
伸一は、車中の人となった。
窓の外を見ると、会館の庭から、雲に覆われた空に、色鮮やかな武者絵の描かれた大凧が揚がっていた。
烈風を受け、悠揚と天に舞う凧は、青森の若師子の心意気を思わせた。
──青年よ、試練を友とせよ。どこまでも忍耐強くあれ。「艱難汝を玉にす」ゆえに。