小説「新・人間革命」源流 25 2016年9月30日

山本伸一は懇談会で、一人ひとりに激励の言葉をかけていった。
メンバーのなかに、全インドの責任者である地区部長を務める女性がいた。
前日、伸一が図書贈呈したデリー大学で、経済学の講師として教壇に立つラビーナ・ラティである。
彼女が御本尊を受持したのは、一九七五年(昭和五十年)六月であった。
信心に励むなかで、難関の就職を勝ち取り、原因不明の頭痛や吐き気、めまいを克服した体験をもっていた。
また、北インドの責任者を務めるハルディープ・シャンカルという壮年は、中学校の教師であった。
鬱病で悩んだ末に信心をはじめ、乗り越えることができたという。
彼は、いかにも生真面目そうな人柄であったが、ともすれば、沈んでしまいそうに感じられた。
伸一は書籍に、「いかなる時でも 明るく朗らかな 指導者たれ」
と、モットーとなる言葉を認め、シャンカルに贈った。
家族が仏法に無理解のなか、ただ一人、信心に励んでいるアローク・アーリヤという青年もいた。
伸一は、彼の報告を聞くと、「あなたの苦労、奮闘は、よくわかっています。
大変だと思うかもしれないが、今、あなたは人生のドラマを創っているんです」と励まし、念珠をプレゼントした。
さらに、二カ月前に入会した婦人のスバルナ・パテールは、日蓮大聖人の仏法に巡り合った喜びに燃えて集ってきた。
彼女は、のちに夫を病で、息子を交通事故で亡くすが、この日の伸一との出会いを胸に、勇気を鼓舞して、苦難を克服していくのである。
ここに集ったメンバーの多くは、その後、インドSGIの中核に育っていく。
ラビーナ・ラティは幹事長となり、ハルディープ・シャンカルはインド創価菩提樹園の園長に、アローク・アーリヤは教育部長に、スバルナ・パテールは南インドの中心者となっていったのである。
渾身の激励は、発心の種子となり、その人のもつ大いなる力を引き出す。