小説「新・人間革命」源流 42 2016年10月21日
家は貧しかったが、勉強が大好きな少年であった。兄や姉は自分たちが小学校に通うことを断念し、彼を小学校に行かせた。
彼は長い道のりを歩いて通学した。目に触れる本や新聞は片っ端から読み、メモした。
授業料が払えず、教室に入れぬこともあった。
苦労に苦労を重ね、トラバンコール大学(後のケララ大学)に進み、首席で卒業した。
大学のある町は、かつてガンジーが差別撤廃のために戦った人権闘争の舞台
であった。
彼は、大学講師やジャーナリストとして活躍し、奨学金を得て、ロンドン・スクル・オブ・エコノミクスに留学する。
ここでも最優秀の成績を収めた。
ネルーとの出会いが、彼の人生を変える。外務省入りを勧められ、外交官として新しい一歩を踏み出すことになる。
この一九七九年(昭和五十四年)、ネルー大学の副総長に就任したのだ。
彼の存在が、カーストによって差別する偏見を打ち破る先駆の力となった。
人間の生き方が、社会の変革を促す。
「ようこそ、わがネルー大学へ!」
「お忙しいところ、時間をとっていただき、ありがとうございました。
民衆の大学者であるナラヤナン副総長とお会いできることを、楽しみにしておりました」
「私もです。今日は、山本先生を、わが大学の“一日教授”としてお迎えします」
「とんでもない。“一日学生”です」
このやりとりに爆笑の渦が広がった。