説「新・人間革命」大山 十五 2017年1月19日

四月四日の夜、宗門と学会の窓口になっていた山脇友政から、青年部長の野村勇に電話が入った。
宗門の現況について、どうしても知らせておきたいことがあるというのだ。
野村は、理事長の十条潔と共に山脇と会って話を聞いた。
山脇は、さも困ったかのような顔で語り始めた。
「鮫島発言によって、宗門は徹底して学会を攻撃する構えです。事態収束のためには、鮫島副会長を処分するのは当然ですが、それだけでは収まりません。
山本先生にも、法華講総講頭だけでなく、学会の会長も辞めていただくしかないでしょう。
そうしない限り、若手僧侶が矛を収めることは絶対にありません。
宗門の怒りがさらに高じていけばどうなるか──最悪の事態を覚悟する必要があります。今回のことでは、日達上人も大層ご立腹です」
「最悪の事態」との言葉が、十条の胸に深く突き刺さった。
鮫島の不用意な発言で、学会側の僧俗和合への必死の努力もすべて無駄になり、それが、学会の支配を画策する邪智の謀略家たちの好餌となってしまったのだ。
十条は、山本伸一と連絡を取り、大まかな話を伝え、緊急首脳会議の開催を要請した。
空は雲に覆われていたが、満開の桜が、王者の風格をたたえて枝を広げていた。
五日午前、伸一は東京・立川文化会館での学会の首脳会議に出席した。
宗門との問題に、いかに対処するかを協議する場である。集っていたのは十条をはじめ、数人の中心幹部である。皆、沈痛な面持ちであった。
初めに山脇が伝えてきた話の報告があり、さらに、宗門の僧たちの動きが伝えられた。
伸一は、いよいよ魔が、その目論見をあらわにしたと思った。
彼を会長辞任に追い込み、創価の師弟を離間させようとする陰謀である。
それは、結果的に、広宣流布を進めてきた仏意仏勅の団体である創価学会を破壊することにほかならない。
魔の蠢動は、信心の眼をもって見破るしかない。