小説「新・人間革命」  大山 三十六 2017年2月14日

山本伸一は、人類の危機が現実化しつつあるなかで、地涌の菩薩の連帯は世界九十数カ国に広がり、日蓮仏法が唯一の希望となっていることに言及し、未来への展望に触れた。
「いまだ世界にわたる平和と文化の実現は、緒についたばかりの段階でありますが、この地球上には、確実にその種子は植えられ、芽をふいております。
これについては、私も今まで努力を積み重ねてまいりました。
しかし、本格的に取り組むのはこれからであり、信仰者としての私どものなすべき大きな未来図として描いていかねばならない。
平和、文化の魂は宗教であり、その潮流の力は、国家を超えた人間の力であります。
古来、文化とは宗教が生命であった。
平和もまた、人間の心の砦のなかに築いていくしかない。一つの基盤が整った時は、恒久的な文化、平和へと歴史の流れを私どもの力でつくっていくしかないのであります」
宗教者が、宗教という枠のなかだけにとどまり、現実世界の危機に目をふさぐなら、その宗教は無用の長物といってよい。
宗教は社会建設の力である。
仏法者の使命は、人類の幸福と世界の平和の実現にある。
ゆえに日蓮大聖人は、「立正安国」を叫ばれたのだ。
文豪トルストイも、こう記している。
「宗教は、過去に於けると同様に、人間社会の主要な原動力であり、心臓であることに変わりない」(注)
伸一は続けた。
「ともあれ、ここに広布の山並みが、はるかに展望し得る一つの歴史を築くことができました。
既に広布への人材の陣列も盤石となり、あとには陸続と二十一世紀に躍り出る若人が続いている。
まことに頼もしい限りであります。私どもは、この日、この時を待ちに待った。
これこそ、ありとあらゆる分野、立場を超えて結ばれた信心の絆の勝利であり、人間の凱歌であります」
それは、彼の勝利宣言でもあった。
創価学会が、わが同志が成し遂げた、厳たる広宣流布の事実は永遠不滅である。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 「宗教とは何ぞや並びに其の本質如何」(『トルストイ全集18』所収)深見尚行訳、岩波書店=現代表記に改めた。