小説「新・人間革命」 大山 五十三 2017年3月6日

山本伸一に続いて、最後に新会長の十条潔がマイクに向かった。彼は、率直に自身の心境を語っていった。
「数年前から山本先生は、『次はあなたたちが力を合わせて、学会を推進していくのだから、すべてにわたって、力を磨いていくように』と言われておりました。
しかし、私は心のなかでは、先生にずっと会長をやっていただくのだと思い、また、辞められることがないように願ってまいりました。
ところが今回、先生は、『七つの鐘』の終了に際して、勇退を固く心に期しておられたのであります。
日ごろから先生は、『いつまでも私を頼りにしてはいけない。
それでは、広宣流布の永劫の流れはつくれないではないか』とおっしゃっておりました。
私どもも、『先生。ご安心ください。私たちがおりますから』と大きなことを言ってまいりました。
そして今や、その時が来てしまったのであります。
まことに非力な、なんの取りえもない私であり、とうていこの任に堪えられるとは思いませんが、皆様方のご支援をいただいて、会員の皆様のために、全力を尽くしてまいりますので、よろしくお願い申し上げます」
十条は、広宣流布に生涯を捧げた戸田城聖の死身弘法の実践を、また、その弟子である伸一の激闘に次ぐ激闘を、目の当たりにしてきた。
それだけに会長の任の重さを肌で感じていたにちがいない。
「初代会長・牧口先生、第二代会長・戸田先生、そして第三代会長・山本先生の三会長に脈打つ、法のため、社会のため、民衆のためという創価学会の大精神と広宣流布への揺るぎない大情熱を、二十一世紀へ引き継いで、安定した恒常的な流れをつくってまいります。
私は、新しい気持ちで、自らの信心と弘教への姿勢を正し、第一歩からやり直すつもりで頑張っていきます」
信心とは、日々発心、生涯発心である。
常に新たな心で、いよいよの気概で、精進を重ねていくのが、仏法者の生き方である。