小説「新・人間革命」 大山 六十八 2017年3月23日
漆黒の空が、次第に紫に変わり、うっすらと半島の稜線を浮かび上がらせる。
やがて金の光が東の空に走り、海はキラキラと輝き、さわやかな五月の朝が明ける。
五月五日、山本伸一は、神奈川文化会館から、夜明けの海を見ていた。
伸一は、神奈川の幹部から、クルーザーを所有する地元の学会員の方が、横浜港周辺を案内したいと言ってくれていると聞き、三十分ほど、乗せてもらうことにした。
船の名は「二十一世紀」号である。
海から見た神奈川文化会館もまた、すばらしかった。
この海は太平洋につながっているのだと思うと、二十一世紀の世界広布の大海原が見える気がした。彼の胸は躍った。
功労者を中心とした伸一の激励の車輪は、既に勢いよく回転を開始していたのだ。
彼は、できることなら、二十一世紀を担う後継の青年部、未来部の集いにも出席し、全精魂を注いで励ましたかった。
また、神奈川文化会館の前にある山下公園には、連日、多くの学会員が集って来た。
そうした同志と会合をもち、力の限り、讃えたかった。
しかし、今、それは許されなかった。
「正義」──その右下には、「われ一人正義の旗持つ也」と記した。
“いよいよ本当の勝負だ! いかなる立場になろうが、私は断じて戦う。
たった一人になっても。
師弟不二の心で断固として勝利してみせる。