小説「新・人間革命」 雌伏 十八 2017年4月14日

蔵林家では、主の龍臣と妻の芳乃の孫たち十人が、琴やハーモニカ、横笛の演奏、合唱などで、山本伸一たちを歓迎した。
子どもから孫へと信心が受け継がれ、すくすくと育っている未来っ子の姿が微笑ましかった。
仏法が、地域へ、社会へと広まり、そして子どもたちへ、未来へと継承されていってこそ、広宣流布の流れが創られていく。
やがて雨も小降りになった。伸一は、蔵林龍臣と腕を組みながら庭を散策した。
少し、はにかみながら、「ありがたい。人生の最高の思い出です」と繰り返す蔵林に言った。
「お父さんの人生は大勝利です。子どもさんも、お孫さんも、皆、立派に育って
いる。
しかし、信心には終わりはありません。命ある限り、同志のため、地域のため、広布のために戦い抜いてください。
大事なのは、総仕上げの時を迎えるこれからです。
明日へ、未来へ、意気盛んに前進していってください」
蔵林は、伸一の顔をのぞき込むように見ては、何度も、何度も頷くのであった。
後に、伸一は、深い感謝の思いを託して、一家に句を贈っている。
「なつかしき 佐久に家あり 銀の城」
二十六日は、長野研修道場での記念撮影の日である。
「希望する方は、全員、参加してください」との連絡を聞いて、長野全県から同志が研修道場に集って来た。
前日の雨は上がり、木々を吹き渡る風がさわやかであった。
メンバーは、昼前から続々と研修道場に到着した。
伸一が、ほとんど「聖教新聞」にも登場しなくなってから四カ月近くになっていた。
皆、ひと目でも伸一と会いたかった。そして、広宣流布への誓いを新たにしたかったのである。
学会の強さは、伸一が会員一人ひとりと結んできた師弟の糸と、同志の糸によって縒り上げられた、団結の絆にこそある。
「力は、健全な人格と強固な団結から生まれる」(注)とは、韓民族独立の父・安昌浩の言葉である。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 安昌浩著『島山安昌浩論説集』乙酉文化社(ハングル)