小説「新・人間革命」 雌伏 三十三 2017年5月2日

山本伸一の声に一段と熱がこもった。
「次いで大聖人は、『異体同心にして』(御書一三三七ページ)と仰せです。
『異体』とは、一人ひとりの個性や特質を尊重することであり、『同心』とは、広宣流布という同じ目的に向かい、心を一つにしていくことです。
たとえば、城の石垣も、さまざまな形の石が、しっかりとかみ合い、支え合っているからこそ堅固なんです。
異体同心は、最も強い団結をもたらすとともに、自身を最大に生かし、力を発揮していく原理でもあります。
この異体同心の信心で、南無妙法蓮華経と唱えていくことを、『生死一大事の血脈』というのだと言われている。
そこに、仏から衆生へと生命の最重要の法が伝わっていく。それが大聖人が弘通する肝要であると宣言されているんです。
そして、その実践のなかに、広宣流布の大願成就もある。
もしも、意見の違いなどによって感情的になり、怨嫉したりするようになれば、本末転倒です。
何があろうが、広宣流布のために心を合わせ、団結していこうという一念で、異体同心の信心で進むことこそが私たちの鉄則です。
いや、学会の永遠の黄金則です。
さらに大聖人は、『日蓮が弟子の中に異体異心の者之有れば例せば城者として城を破るが如し』(同)と述べられている。
最大の悪とは、内部から広宣流布をめざす異体同心の団結を攪乱、破壊することです。
それは、広布の激戦を展開している渦中に、味方が自分たちの城に火を放ち、斬りかかってくるようなものだ。
異体同心を破る者は、いかに自己正当化しようが、第六天の魔王の働きをなすものです」
学生部の幹部の一人が口を開いた。
「幹部として一生懸命に頑張って、信心を完結する先輩もいれば、退転し、敵対していった先輩もいました。その根本的な要因は、どこにあるのでしょうか」
「結論からいえば、奥底の一念が、広布中心か、自分中心かということです」