小説「新・人間革命」〉 雌伏 四十一 2017年5月12日

今回の第三回鼓笛隊総会では、壮年・婦人・男子・女子部の合唱団が一体となって交響詩「民衆」を歌い上げた。
まさに多様な民衆が力を合わせ、凱歌を轟かせていったのだ。
山本伸一は、詩「民衆」に綴っている。
   
 科学も 哲学も
 芸術も 宗教も
 あらゆるものは
 民衆に赴くものでなければならない
   
 君のいない科学は冷酷──
 君のいない哲学は不毛──
 君のいない芸術は空虚──
 君のいない宗教は無慙──
    
 君を睥睨する者どもは
 脚下にするがよい……   
    
伸一は、交響詩を聴きながら、学会が担っている使命の意味を、深く噛み締めていた。
あらゆる権力の軛から、そして、宿命の鉄鎖から民衆を解放する──それが創価学会の使命だ! それがわれらの人間主義だ! 私は戦う! 断じて戦う! 民衆のため、広布のために。
そして、何があっても民衆を守り抜き、民衆の時代を開いてみせる!
鼓笛隊総会はフィナーレとなった。メンバーが場内通路をパレードし、全出演者が舞台に上がり、「平和の天使」を大合唱する。
   
 平和の天使 鼓笛の同志よ……
   
熱唱する乙女らの?に感涙が光っていた。それは、清らかな青春の魂の結晶であった。
伸一は、あいさつの要請を受けていた。彼も、メンバーの健気な努力と精進に、御礼と感謝の励ましの言葉をかけたかった。
観客席でマイクを手にして立ち上がった。歓声と雷鳴のような拍手が起こった。
「大変に美しく、立派な演技であり、見事な総会でした。感動いたしました!」