小説「新・人間革命」 雄飛 十四 2017年6月30日

訪中前の日本での語らいで、山本伸一は、巴金ら中国作家代表団に、「次回は、革命と文学、政治と文学、平和と文学などについて語り合いましょう」と言って、再び会うことを約したのである。
そして、第五次訪中で、二十四日に伸一が主催した北京での答礼宴の折には、謝冰心と再会。
さらに、この上海で巴金と二度目の会談が実現したのである。
伸一が、政治と文学の関係について意見を求めると、彼は即答した。
「文学は政治から離れることはできない。しかし、政治は、絶対に文学の代わりにはなり得ません。
文学は、人の魂を築き上げることができるが、政治にはできないからです」
話題は、文化大革命に移っていった。
巴金は文革の時代、「反革命分子」とされ、文芸界から追放された。
彼を批判する数千枚の大字報(壁新聞)が張り出され、「売国奴」と罵られもした。
彼は、この苦難をきちんと総括し、自分を徹底的に分析し、当時、起こった事柄を、はっきり見極めていくことの大切さを強調した。
巴金は文化講演会でも、こう訴えている。
「私は書かなければなりません。私は書き続けます。
そのためには、まず自分をより善良な、より純潔な、他人に有益な人間に変えねばなりません。
私の生命は、ほどなく尽きようとしています。
私はなすべきこともせずに、この世を離れたくはありません。私は書かねばならず、絶対に筆を置くことはできません。
筆によってわが心に火をつけ、わが体を焼きつくし、灰となった時、私の愛と憎しみは、この世に消えることなく残されるでしょう」
時代の誤った出来事を看過してはならない。
その要因と本質とを深く洞察し、未来のために戦いを開始するのだ。
会談で巴金は、「今、文革についての小説を書き始めました。ゆっくりと、時間をかけて書いていくつもりです」と語った。
正義の闘魂が、新しき社会を創る。