【第1回】 ハワイの「砂の白馬」   (2017年5月1日)

平和をつくる「アロハの心」
 
地球は、命の星です。
私たちが生きる世界には、たくさんの命が満ちています。
鳥も虫も魚も、花や木も、生きています。道ばたを見れば、コンクリートのすき間からも、たくましく草が伸びています。
そして、どの国でも、元気な少年少女たちが育っています。
この世界を、生命かがやく平和な「光の星」にしたい。
私は、この願いをこめて、いろんな国へ行って、多くの人と友情を結び、未来を語り合ってきました。
その旅の中で、私が時間を見つけては、続けてきたことがあります。それは、写真をとることです。
〝日本でがんばっている友人たちにも見せて、いっしょに旅をしたような、楽しい気持ちになってもらいたい。
他の国の人たちとも、美しい景色を共に味わい、友情を深めたい〟──そんな思いからでした。
写真は「光のまほう」であり、「心の窓」です。
この光で照らせば、「今」という 〝しゅんかん〟を「永遠」にとどめることができます。
この窓を開ければ、世界のどこの国にでも行けます。
さあ、少年少女部のみなさん!  いっしょに、この「光の窓」から 〝世界旅行〟に出かけよう!
この命の星に生き生きとかがやく、花や草木、山や海、家や街、 公園や港などの風景から、にぎやかなメッセージを聞きとろうよ!
 
見わたす限りの、海、海、海。
どこまでも広がる青い海原に白い波が立つ、太平洋の真ん中に、 火山のふん火でできた島々があります。
アメリカの島、ハワイです。
1960年、私が世界への第一歩を踏み出したのは、ハワイでした。
師匠である戸田城聖先生の夢を受け継いで、平和の仏法を地球全体へひろめる旅を、私はハワイから始めたのです。
うれしいことに、その後、たくさんのメンバーが増えていきまし た。
初めての訪問から25年たった1985年7月には、みんなで平和をちかう文化の祭典が、盛大に行われました。
晴れわたる空とまぶしい太陽。 エメラルドグリーンの海。
しお風にゆれるヤシの木。
滞在していた宿舎で会合の準備をしていた時です。外から、楽しそうな声が聞こえてきます。
窓の外を見ると、白い砂浜の上を駆け回る、子どもたちの姿がありました。
未来っ子の明るい元気な声こそ、みんなの希望です。平和の力です。
私も、とってもうれしくなりました。
バルコニーの真下の砂浜に目がとまりました。そこに、すてきな白い馬がいたからです。
まるで今にも走りだしそうな、砂でつくられた白馬でした。
私は、思わず手元のカメラのシャッターを切りました。そして、心の耳をすましたのです──。
 
砂浜に打ちよせる波の音が、ひびいています。
「やあ、元気かい? 気持ちのいい日だね!」
 波くんが、砂浜の白馬くんに話しかけました。
「こんにちは! すばらしい天気だね。散歩にでも、出かけたいな」
砂の白馬くんは、そう言って起き上がり、みぶるいをして、動きだそうとしています。
波くんは、白馬くんの近くまで来ては、「またね」と海に帰っていきます。
砂でできた白馬くんの体にさわって、こわしてしまわないように気づかっているのです。
やさしい波くんと白馬くんとは、同じ浜辺で楽しくお話しする、仲のいい友だちなのです。
「ハワイは、いいところだね」
馬くんは言いました。
「あたたかくて、気持ちいいね。こんな平和な日が、いつまでも続けばいいのにな」
すると、そばで聞いていたヤシの木さんも、そよそよとうなずいて、おしやべりに参加します。
「そのとおりよね。でも……」
ヤシの木さんは、少し悲しそうに、広げた葉をふるわせました。
「楽園のようなこの島でも、私のおじいさんが生まれたころ、ひどい戦争があったのよ。
ばくだんを落とされ、建物や船がこわされて、何人も、命を失ってしまったの」
それを聞いていた波くんも、言いました。
「戦争で、しずめられた船が、今でも海の底に、横たわっているんだよ。
戦争が終わってから、もう何十年もたっているのに、今も船からは、油がもれ出しているんだ。
人間が二度とそんな戦争をくり返さないように、教え、ちゅういしているんだ」
波くんとヤシさんのお話を聞いていた白馬くんが言いました。
「人間は、なぜ、戦争なんかしてしまうんだろう。
なぜ、敵と味方に分かれて、争ってしまうんだろう。みんな地球の仲間なのにね」
波くんは答えます。
「そうだよね。ぼくたちみたいに、みんなちがって、いろいろだから、いいのに。
砂だけの地球でも、波やヤシの木だけの地球でも、全然おもしろくないよ」
するとヤシさんは言いました。
「だから私たちは、ずっと仲良しでいきましよう!
もちろん、ヤシの実を砂にぶつけてしまうこともあるし、砂が風にあおられて暴れることもあるけど、すぐに仲直りよ。
それが、ハワイの『アロハ』の心だもの」
 
「アロハ」とは、「こんにちは」「ようこそ」など、いろいろな意味を持つ、あいさつの言葉です。
さらに「おはよう」や「さようなら」「大好きだよ」という意味まであるのです。
だから、「アロハ」とあいさつされた人は、心があたたかくなり ます。「アロハ」と言った人も元気になります。
私も、ハワイの友と何度も「アロハ」とあいさつをかわしてきました。
ハワイの友人たちは、どんな人とでも家族のように仲良くなり、はげまし合い、平和をつくる「アロハの心」を大切にしています。
それは、どんなにひどい戦争や暴力にも負けず、自分と人とのちがいをみとめ合い、相手を大切にしていこうとする心なのです。
私は、ハワイの人たちが伝えてきた、相手を思いやる「平和の心」を世界中に仏げる思いで、これまで、54カ国・地域を訪問してきました。
みなさんのお父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん、近所の学会のおじさん、おばさんたちも、私と同じ思いでまわりの人をはげましてくれました。
そして、きょうも、平和のために、行動してくれています。ハワイでも、今、多くのSGIのメンバーが、活やくしています。
みなさんも、白馬に乗って、さっそうと世界中に平和の友情を結ぶような人になってください。
いつか、お父さんやお母さんをハワイなど世界に連れて行っていただきたいとも願っています。
では、また来月、お会いしましよう!  アロハ!