【第4回】 ブラジル「クワレズメイラの木」  (2017年8月1日)

 
胸を張れ! 君も私も一番だ
 
待ちに待った夏休み。みんな、元気にすごしているかな? 事故には気をつけて、楽しい思い出をつくってね!
地球は広い。北半球の日本が夏の今は、南半半球では冬なんだよ。
ちょうど去年の今ごろ、オリンピック•パラリンピックの大会が、ブラジルのリオデジャネイロという場所でおこなわれたのを、みんなは、おぼえているかな。
ブラジルは、私の大切な友だちがいっぱいいる大好きな国です。
ブラジルといえば、サッカーやサンバのおどりも有名だね。日本から見ると地球の反対側で、時差は12時間。
夜、日本の私たちが一日の行動を終えようとする時、バトンタッチするように、ブラジルの友人たちが朝、はつらつと一日の行動をスタートするんだよ。
面積は円本の約23倍。南米大陸の実に約半分にあたる、広大なスケールです。
アマゾンのように熱帯林におおわれた地域があるかと思えば、大草原や大湿原も広がり、砂漠のような地域もあります。
私はこれまで4度、ブラジルに行きました。
4回目となった19932月から3月にかけての訪問で、サンパウロという南半球で最も大きな都市の近くにある、ブラジルSGIの自然文化センターを訪れました。
日本は寒い季節でしたが、ブラジルは夏まっさかり。センターにはスイレンやハイビスカス、ヒマワリなど、SGIのみなさんが真心こめて育ててくれた花々が、色とりどりに咲き薫っていました。
サンパウロを代表する木で、むらさき色とピンク色の花をつけた「クワレズメイラ」も満開でした。
日本でいう、野ボタンの仲間で、英語では「むらさきの栄光の木」と呼ばれます。
見とれていると、青空に、どこからともなく大きなわたあめのような雲があらわれました。
さわやかな風が吹きわたり、まるで大自然が一体となって、みんなとおしゃべりしているかのようです。
私は手元のカメラをかまえ、その声に耳をかたむけました──。
 
おひさまの陽光さんが、ニコニコとかがやいています。その光をめいっぱい浴びているクワレズメイラの木のメイラさんは、とっても気持ちよさそうです。
メイラさんは、陽光さんに語りかけました。
「陽光さん、いつもありがとう。 毎日毎日、世界を明るくして、み んなを元気にしてくれる陽光さんは、本当にすごいわ。
私は、陽光さんが『世界で1番』だと思うの。私も、陽光さんみたいになりたいな」
陽光さんが、やさしく答えました。「そう言ってくれて、うれしいわ。でも白雲《しらくも》くんのほうが、もっとすごいと思うのよ。
だって白雲くんは、いつも大空で伸び伸びしていて、いろんな形に変身できる。
私をかくしてしまうことだってできるし、雨をふらせて草花の成長を助けたりもできる。
白雲くんこそ、『世界で1番』よ」
メイラさんは、大きくうなずきました。
その時、地平線の向こうから、ちようど白雲くんがもくもくとやってきたので、メイラさん は声をかけました。
「ねえねえ。陽光さんから、白雲くんが世界で1番だって聞いたの。
だから私も、白雲くんみたいになりたい。どうすれば、なれるかしら?」
白雲くんは言いました。「うわー、照れるなあ。でもやっぱり1番は薫風くんじゃないかな。
薫風くんのおかげで、ぼくはいろいろな形に変身できるし、遠いところまで飛んでいけるんだから」
メイラさんは、「なるほど」と思いました。
すると、ちようどそこに、長旅をしてきた薫風くんが、元気いっぱい、ぴゅーっとかけぬけていこうとします。
メイラさんは、大きな声で呼びとめました。「ねえねえ、薫風くん、薫風くん。私を薫風くんのようにしてください。私も1番になりたいんです」
薫風くんは、おどろいたような顔をして答えました。「ぼくが、1番だって? いやいや、それなら、ぼくじゃないよ。
だって、どんな風に吹かれても、ぜんぜん、 びくともしない木が、ブラジルにはあるというんだ。
ぼくは、その木に会いに来たんだよ」
メイラさんが聞きました。
「なんていう名前なの?」
薫風くんは、ちよっと考えてから言いました。
「たしか、『クワレズメイラ』 と言ったかな。
なんでも、大地にしっかり根を張って、とっても美しい花を咲かせるらしいんだ。
そう! 君みたいに!」
「え?」。メイラさんはびっくりして、顔をピンク色にそめました。
「私が……1番……?」
陽光さんが、ほほえみました0「たしかに! 私も、いつだって、メイラさんの姿に勇気をもらっているのよ。
だから毎日、いっぱい光を送ろうと、がんばれるの」
白雲くんも言いました。
「うん。ぼくは何にでも変身できるけれど、メイラさんみたいに、きれいな花は咲かせられない。
メイラさんはずっと同じ場所でがんばって、みんなに喜びを広げている。 すごいことだよ」
薫風くんが、そよそよと、さわやかな風を、みんなに送りました。
「みんながみんな、だれかを喜ばせているんだ。
みんながみんな、何かの1番なんだね」  
どこまでも広がる夏の空に、楽しくにぎやかなおしゃべりの声が、いつまでもひびいていました。
 
陽光さんは1番、明るい。
白雲くんは1番、伸びやか。
薫風くんは1番、元気。
メイラさんは1番、がんばりやさんです。
世界には、いろいろな 1番」が、かがやいています。
みなさんのまわりにも、いろんな1番の友だちがいるでしょう?
勉強が得意な人もいれば、読書が好きな人もいます。
スポーツで光っている人もいれば、絵や歌が上手な人もいるでしょう。
時には、ほかの人をうらやましく思ったり、自分に自信が持てなくなったりすることもあるかもしれません。
でも、落ちこむ必要なんてありません。
なぜなら、君もあなたも、何かの「1番」になれるからです。だから、胸を張ろう!
1番、親孝行をするぞ〟
1番、友だちを大切にしよう〟
1番、本を読もう〟
1番、勉強をがんばるぞ〟
1番、体をきたえるぞ〟
自分が好きなことでも、興味があることでも、何でもいい。
1番をめざし、努力していけば、何かの1番に必ずなれます。
題目をあげれば、みんなの中にある「1番の力」が、どんどん引き出されていくのです。
さあ、「挑戦の夏」がやってきました。自分の「1番」を光らせる冒険へ、元気に出かけよう!
 
池田先生が初めてブラジルを訪問したのは、196010月のことでした。
アメリカ、カナダを訪れた先生は、途中、体調をくずしてしまいました。
心配したまわりの人たちは、次の訪問地であったブラジルへわたることに反対しました。
しかし先生は、「私は行きます。私を待っている同志がいる」と、1019日にブラジルのサンパウロへ。
20日、海外初の支部である「ブラジル支部」が結成されたのです。
メンバーは「良き市民」として、地域の発展に尽くしてきました。
こうしたSGIの行動に信頼が広がり、池田大作博士環境公園など、創価3代会長の名前がついた公園や通り、橋などが次々と誕生。
先生には、ブラジルの最高勲章である「南十字国家勲章」、また150にのぼる名誉州民•市民証がおくられています。
また、サンパウロには、ブラジル創価学園が創立され、みなさんの仲間が元気いっぱいに学んでいます。