小説「新・人間革命」 暁鐘 二十 2017年9月23日
前日の雨もあがり、初夏の太陽がまばゆかった。
小・中学校や高校、大学、職場や地域のグループなど、老若男女の集団が、さっそうとパレードを繰り広げていく。
キリル兄弟を讃えた大きな絵も掲げられ、パレードに花を添えていた。
吹奏楽団は軽快な調べを奏で、バトントワラー隊は躍動の演技を披露しながら進む。
ソフィア大学のパレードの先頭に立っているのはディミトロフ総長であり、教授、学生が続いていた。
幼い子どもの手を引いたり、肩車をして歩く市民の姿もある。カーネーションを振っている人たちもいる。
心は一つにつながりながら、笑みの花が咲く、伸びやかで人間味豊かな大行進である。
来賓として招かれていたモスクワ大学のV・I・トローピン副総長は、伸一に言った。
翌二十五日の午後、伸一の一行はブルガリアを発った。
ソフィアの空港に見送りに来たアレクサンドロフ文化委員会副議長は、?を紅潮させながら語った。
「私たちも、世界的な活躍をなさっている先生の、友人の一人に加えていただければ幸甚です。
文化委員会のジフコワ議長も、先生ご夫妻の訪問を心から感謝し、『くれぐれもよろしく』と申しておりました」
そのジフコワ議長は、二カ月後の七月二十一日に急逝する。
享年三十八歳であった。早すぎる死を世界が惜しんだ。
ブルガリアの美しき純白の花は、すべてを覚悟のうえで、全力で働き抜き、鮮やかに散った。
伸一は峯子と共に、信念に生き抜いた気高き生涯を偲びつつ、冥福を祈った。