小説「新・人間革命」 暁鐘 五十五 2017年11月4日

十八日正午、山本伸一聖教新聞社の社主として、マンハッタンのロックフェラ
ー・センターにあるAP通信社を訪問し、社内を視察したあと、キース・フラー社長らと会談した。
人種問題や、マスコミの責任と役割など、多岐にわたって意見交換を行った。
そのなかで伸一は、世界の出来事を、正しく世界中に知らしめることは、「平和
への最高の手段」であると述べ、同社の奮闘と努力に敬意を表した。
また、経済などの不安が増すと、人間は、理想よりも目先の利益を重視し、理性
よりも感情が先行し、排他的な社会がつくられていく懸念があると指摘した。
そして、人びとが平和・社会貢献の意識を高めていくには、自分の感情に翻弄されるのではなく、心の師となる真の宗教が必要であると訴えると、フラー社長も大きく頷き、同感の意を示した。
AP通信社を後にした伸一は、同じマンハッタンにあるパーク・アベニュー・サ
ウスのニューヨーク会館を訪れた。
ここはビルの一階にあり、八十脚ほどのイスしかない、小さなフロアの会館であ
った。
伸一の訪問を聞いて、多くのメンバーが集って来たため、会場は立錐の余地
もなかった。
「グッド アフタヌーン!(こんにちは!) お会いできて嬉しい。
ニューヨークの広宣流布を、また、皆さんの健康と幸せ、ご一家の繁栄を願って、一緒に勤行をしましょう」
伸一は、ニューヨークの同志が一人も漏れなく信心を全うし、崩れざる幸福境涯
を築くとともに、社会にあって信頼の柱に育ってほしいと念願しながら、深い祈りを捧げた。
そのあと、信心の基本中の基本である、南無妙法蓮華経の偉大なる力と、唱題の
大切さについて語っていった。
御本尊への祈りこそ、信心の根本である。それを人びとに教えるための組織であ
り、学会活動である。広宣流布への前進の活力も、宿命転換への挑戦も、また、団結を図っていくにも、各人が御本尊への大確信に立ち、強盛な祈りを捧げることから始まる。