小説「新・人間革命」 勝ち鬨 二十一 2018年1月1日

「ああ紅の 朝明けて……」
山本伸一は、「紅の歌」のテープを聴き、歌詞の意味を?み締めながら、心で青年たちに呼びかけた。
――雲を破り、真っ赤な太陽が昇る。刻一刻、空は紅に染まり、新生の朝が訪れる。
「紅」とは、わが胸中に燃える元初の太陽だ! 時代を開かんとする熱き闘魂だ! 若々しき生命力の輝きだ!
おお、旭光のごとく、世界広布へと先駆ける、凜々しき創価の丈夫たちよ! 
「生命の世紀」を告げる暁鐘は、今、音高く打ち鳴らされ、栄光の朝が到来したのだ。
栄光とは、不撓不屈の挑戦がもたらす、幸と勝利の光彩である。
青年よ、恐れるな! 「驕れる波浪」を、そして、一切の障魔を打ち砕いて、前へ、前へと進みゆくのだ。
広宣流布は、正義と邪悪との戦いである。
正義だからといって、必ずしも勝つとは限らない。
悪が栄える場合もある。ゆえに仏法は勝負なのだ。
地涌の使命に生き、仏法の正義の旗を掲げ持つわれらは、断じて負けてはならない。
勝たねばならぬ責任がある。
地涌の菩薩とは、われら創価の民衆群像である。
苦悩する人びとを救おうと、あえて五濁悪世の末法に出現したのだ。
辛酸と忍耐のなかで、たくましく自らを磨き上げ、人生の勝利劇を演じ、仏法の偉大なる功力を証明せんと、勇んでこの世に躍り出たのだ。
宿命の嵐が、吹き荒れる時もある。苦悩なき人生はない。
しかし、広宣流布の使命を果たすために、勇気を燃え上がらせて戦う時、希望の虹は懸かり、苦悩は歓喜へと変わる。
人間は、臆病になり、挑戦をやめ、希望を捨て、あきらめの心をいだくことによって、自らを不幸にしていくのだ。
われらは妙法という根源の法に則り、満々たる生命力をたたえ、一つ一つの課題を克服しながら広布に走る。
ありのままの自分を輝かせ、自他共の幸福を築くために。
あふれる歓喜を胸に、誇らかに「民衆の旗」を掲げ、民衆の勝ち鬨を高らかに轟かせゆくために。
 
小説『新・人間革命』語句の解説
◎五濁悪世/五濁は、生命の濁りの諸相を五種(劫濁・煩悩濁・衆生濁・見濁・命濁)に分類したもの。人間、時代、思想が乱れた末法の様相のこと。