小説「新・人間革命」 誓願 二十三 2018年4月21日
その一方で彼は、各国の指導者との対話を重ね、国連を軸に平和の潮流を創造していくことを深く決意していた。
また、未来を担う学生たちが、友情と平和の連帯を幾重にも結んでいけるよう、世界の大学等との教育・文化交流にも力を注ぎ続けていこうと決めていた。
政治の世界は、ともすれば時代の激流に翻弄されがちであるが、大学などの学問の府には普遍性、永続性がある。
その国の最高学府に学んだ人たちは、社会建設の次代の担い手となる。
さらに、若い世代の交流は、グローバル化する世界を結ぶ新しい力となろう。
伸一の行動に力がこもった。同志の激励のために、日本国内を以前にも増して、くまなく回り、さらに、世界を駆け巡った。
一九八三年(昭和五十八年)の五、六月には、アメリカ、ヨーロッパを訪問した。
同大統領からは、八二年(同五十七年)五月、訪問を要請する親書が届いていた。
会見は二月二十一日、首都ブラジリアの大統領府執務室で行われた。
思えば、十八年前の訪問中、彼の周囲には、常に政治警察の監視の目が光っていた。
以来、社会に学会理解と信頼を広げるための、ブラジル同志の奮闘が始まった。
誤解を招くのは一瞬だが、それを解き、信頼を築き上げるには、何年、何十年の歳月を要する。