小説「新・人間革命」 誓願 三十九 2018年5月11日
そのなかで世界は、一つの大きな転機を迎えようとしていた。東西冷戦の終結である。
核を保有する両国の、直接の戦争はないことから、「冷戦」と呼ばれたが、そこには、常に「熱戦」になりかねない危険性があった。
両陣営の対立は激化し、一九六一年(昭和三十六年)には、東西に分割されていたドイツのベルリンに壁がつくられ、市民の自由な行き来が禁じられた。
また、六二年(同三十七年)のキューバ危機は、米ソの全面核戦争に発展しかねない、一触即発の状況にあることを痛感させた。
さらに、東西の対立は、ベトナム戦争のように、アジアをはじめ、世界に広がり、悲惨な戦争をもたらしていったのである。
分断は分断を促進させる。ゆえに、人間という普遍的な共通項に立ち返ろうとする、統合の哲学の確立が求められるのである。