小説「新・人間革命」 誓願 八十九 2018年7月11日

山本伸一は、"掲載される写真を、自分との語らいの場面にしたい"という、ローザ・パークスの要請に恐縮した。
後日、出版された写真集が届けられた。彼女の言葉通り、伸一と握手を交わした写真が掲載されていた。
「人権運動の母」の、優しく美しい笑顔が光っている。
冒頭には、こう書かれていた。
「この写真は未来について語っています。わが人生において、これ以上、重要な瞬間を考えることはできません」。
そして、文化の相違があっても、人間は共に進むことができ、この出会いは、「世界平和のための新たな一歩なのです」と──。
伸一は、このアメリカ訪問で、ロサンゼルスにある「寛容の博物館」を訪れている。
同博物館では、世界各地での人権抑圧や、人類史上最大の残虐行為であるホロコーストユダヤ人大量虐殺)の歴史に焦点を当てて、展示が行われていた。
館内を見学し、ユダヤの人びとの、受難の過酷さに触れた彼は、同博物館の関係者たちに語った。
「私は、貴博物館を見学し、『感動』しました! いな、それ以上に『激怒』しました!
いな、それ以上に、『このような悲劇を、いかなる国、いかなる時代においても、断じて繰り返してはならない』と、未来への深い『決意』をいたしました」
民族、思想、宗教等の違いによる差別や抑圧。そして、それをよしとしてしまう人間の心──そこに生命に潜む魔性がある。
その魔性と戦っていくことこそ、仏法者の使命にほかならない。
初代会長・牧口常三郎は、戦時中、戦争遂行のために思想統制を進める軍部政府の弾圧と戦い、獄死した。
共に投獄された第二代会長・戸田城聖は、戦後、「地球民族主義」の理念を掲げ立った。
この師弟の行動は、人間を分断する、あらゆる「非寛容性」に対する闘争であった。
広宣流布とは、人権のための連帯を築き、広げていくことでもある。