【第33回】 「誓願」の共戦譜 2018年8月22日
「立正安国」へ 不屈の前進!
黄金の「人間革命」の日記文書を
池田先生ご夫妻が信越の友のもとへ。小説『新・人間革命』の執筆開始から25周年の今月6日、長野研修道場で
この夏は猛暑の一方、記録的豪雨や台風が続発しております。
特に先月、「西日本豪雨」で甚大な被害に遭われた、広島、岡山、愛媛をはじめ、被災地域の皆様方にお見舞いを申し上げます。
被災された方々が安心して暮らせる生活の復旧、地域社会の復興を、いやまして真剣に祈念せずにはいられません。
酷暑の中、青年部や壮年部の有志が「かたし隊」(清掃ボランティア)として懸命に大奮闘され、友に寄り添って奔走してきた同志も大勢おられます。
尊い尽力に、深く最敬礼する思いです。
四十年前(一九七八年)の夏、私は中国・四国を相次いで訪問し、方面の歌を贈りました。
ああ虹かかる 生命晴れたり」
「友よ負けるな 妙法の 祈りの功徳は 天空に 四国の民衆に そそがなん おお前進だ 鐘は鳴る」──と。
一番苦労している方々が、一番幸福を勝ち開くための信心です。
折々に「地涌の讃歌」と「我等の天地」の歌を妻と口ずさみつつ、けなげな宝友に届けと題目を送り続けてまいります。
すなわち──
天台大師は六世紀に誕生(五三八年)。
日蓮大聖人は、その約七百年後の十三世紀に出現された(一二二二年)。
さらに約七百年後の二十世紀、創価の師弟が涌出した(学会の創立は一九三〇年)──。
◇
御聖訓には「漢土一千年・日本七百年・又 目録にのせて候いしかども仏のごとく大難に値える人人少し」(御書一一八一ページ)と仰せである。
仏法史に名を残す人びとは多けれども、大難に遭いながら正法を弘通した人は一体、誰なのか。
先師は誓願を貫き通して殉教され、「死身弘法」の鑑を留められた。
法華経の「万人成仏」の法理を「人間革命」として展開された恩師は、最晩年、学会永遠の指針として「難を乗り越える信心」と宣言された。
困難を越える力
思えば私が第三代会長に就任したのは、一九六〇年(昭和三十五年)。
「立正安国論」が時の為政者に提出された文応元年(一二六〇年)より七百年であった。
大地震、水害、飢饉、異常気象、疫病……打ち続く災禍に翻弄される民の悲嘆を、大聖人は肌で感じられ、戦乱の危機をも洞察していかれた。
「此の事を愁いて胸臆に憤?す」(同一七ページ)と記された御心中は、まさに苦悩の民衆への限りない同苦であり、悲惨な現実への憤りであられたに違いない。
どうすれば、この苦悩を少しでも打開できるのか、この娑婆世界で分断や対立を超え、より人間の幸福・安穏を実現できるのか──眼前の難題に挑み、心ある友と誓いを共有し、対話を重ね、行動の連帯を広げる。
これが「立正安国」の出発点だ。
人類の前途にいかなる試練があろうと、勇敢に立ち向かう「青年の連帯」がある限り、絶対に希望は失われないと、私たちの信念を訴えたのだ。
「レジリエンス」とは、互いに助け合い支え合い励まし合って、共に苦難を乗り越えゆく、人間と人間の連帯の力、社会的な強靱性として捉えられる。
この連帯の力を民衆の中に張り巡らしていくのが、私たちの立正安国の対話にほかならない。
先月、中華全国青年連合会(全青連)の代表団の方々が来日し、東京、東北、北海道で有意義な交流を結んでくださった。
その折、中国言論界のリーダーの方が、かつて周恩来総理が立てられた問いへの答えを見出せた、と語っておられた。
すなわち、“なぜ創価学会は多くの民衆から支持されるのか?”との提起に対して、それは“師弟の心と心、同志の心と心が直接つながっているからである!”と。
我らは、あらゆる差異を超えて、地域に社会に「レジリエンス」の安全地帯を創り広げていく。
なればこそ世界の良識の期待と信頼も大きい。
民衆勝利を刻む
大聖人が「立正安国論」を発表されて満七百年(一九六〇年)の七月十六日を、私は沖縄の同志たちと迎えた。
東洋広布、世界広布の先駆けとして、沖縄支部が結成された折、皆で明るく賑やかに舞を舞ったことが思い出される。
「各各なにをかなげ(歎)かせ給うべき、迦葉尊者にあらずとも・まい(舞)をも・まいぬべし、舎利弗にあらねども・立ってをど(踊)りぬべし、上行菩薩の大地よりいで給いしには・をど(踊)りてこそい(出)で給いしか」(同一三〇〇ページ)
この歴史の一大転換の行進の先頭を、威風も堂々と進みゆくのが、誉れの沖縄家族である。
だからこそ私は、小説『人間革命』の執筆を、沖縄で開始した。恩師の七回忌を未曽有の弘教で荘厳し、平和への民衆の大陣列を広げた一九六四年(昭和三十九年)の、十二月二日である。
若き日から私が執筆の範と仰いだ一人は、フランスの不屈の大文豪ビクトル・ユゴーであった。
そのユゴーの言葉に、「戦いを経た偉大な思想、他を圧倒した偉大な出来事から学ばなければなりません」とある。
今、小説『人間革命』全十二巻に続く、『新・人間革命』も、いよいよ全三十巻の完結を迎えようとしている。
執筆25周年の朝
今年の八月六日「広島原爆の日」の朝、私は長野研修道場で、平和への祈りを厳粛に捧げた。
そして、二十五年前(一九九三年)、『新・人間革命』を書き始めたこの地で、仕上げの執筆をしたのである。
妻と共に、真心あふれる共戦への感謝を込めて、研修の役員の方々とお会いした。
皆の朗らかな笑顔が本当に嬉しかった。
交わす挨拶に、常に祈り支えてくれている全国、全世界の友への深謝を重ねさせていただいた。
大聖人は「八万四千の法蔵は我身一人の日記文書なり」(御書五六三ページ)と仰せである。
ゆえにそれは、連載の完結をもって終わるものでは決してない。
我らは、これからも、未来永遠に、師弟共戦の「誓願」という主題を貫徹しながら、自他共の生命に栄光凱歌の日記文書を厳然と刻みゆくのだ!
「人間革命 光あれ」と。 (随時、掲載いたします)