【第10回】人材育成――広宣流布の大河の流れを(2018.10.23)


連載「世界宗教の仏法を学ぶ」では、池田先生の指導や励ましを教学のテーマ別に紹介。
併せて、それらに関する仏法用語や日蓮大聖人の御書などを紹介します。
 
10回のテーマは「人材育成」です。
「各部代表者会議」でのスピーチ(2005720日)
 
創価学会の永遠性を確立しゆく根幹は人材育成です。自ら後継の人材育成に全魂をそそぐ池田先生は、2005720日、各部代表者会議に出席。
“後輩を自分以上の人材に育成する”学会の伝統精神についてスピーチしました。
「学会は人材をもって城となす」
これが戸田先生の永遠の指針であった。
昭和29年(1954年)の4月、私は、戸田先生にお供して、仙台の青葉城址を訪れた。
当時、私は、いつも戸田先生のおそばにいた。先生のご指導をひとことも聴き漏らさず、命に刻もうと必死であった。
いかにして、戸田先生のご構想を実現していけばいいのか。
どうすれば、戸田先生と「不二」の心で進んでいけるのか。
若き私は、それを真剣に悩み、祈りながら、わが使命の道を懸命に切り開いていた。
青葉城址には、有名な伊達政宗(だてまさむね)の像がある。
その像に向かって、「伊達君、元気か!」と呵々大笑されていた先生。
このとき、戸田先生は、堅固な石垣が残る青葉城址に立ち、厳として、こう言われた。
「かつての日本は、城をもって戦った。学会は永遠に人材の城でいこう。学会は人材をもって城となすのだ」と。
今も、その声が耳朶(じだ)に響いて離れない。
大事なのは、人材である。人材の城を築いたところが、未来永遠に勝ち栄えていく。
ゆえに先輩は、真心こめて、後輩を育てていくことである。
後輩の成長のためなら、喜んで犠牲になるくらいの覚悟で。
そして、育ててもらった後輩は、また次の後輩を全力で育てていく。
このようにして築かれる人材城は、永遠に滅びない。
反対に、大切な後輩を利用したり、自分が偉くなるための手段にするようなところは、絶対に伸びない。
一時は栄えているように見えても、最後は必ず滅びていくものだ。
伸びている組織、伸びている団体は、濁りのない誠実な心で人材を育成し、立派な人格をもって人材を触発しているところである。
そして正邪の基準をしっかりと持ち、明快に教えているところである。
先輩は後輩を自分以上の人材に育てていく――これが、牧口先生、戸田先生以来の学会の伝統である。
私もまた、人材育成を一切の根本に置いて、広宣流布
指揮を執ってきた。戸田先生の指導のとおりにやってきた。
だからこそ、学会は、世界的に賞讃される「黄金の人材城」とそびえ立っているのである。
学会は永遠に「人材の城」で勝ち進んでまいりたい。
未来のすべては、青年の手の中にある。私は、創価の青年の健康と勝利と活躍を心から祈っている。
社会的にも偉くなってもらいたいし、人間的にも立派になって、周囲の人々を平和へ幸福へと糾合していく存在となってもらいたい。
そのような力ある青年が、さらに増えていけば、広宣流布は、いちだんと大きく広がっていく。
戸田先生は、「青年の時代だ。青年に一切を託す」と言われ、私を中心とした青年部に後継のバトンを渡された。
私も今、同じ心で、新しい青年部に学会のすべてを託したい。(『池田大作全集』第98巻)
 
理解を深めるために
 
「令法久住」こそ仏の願い
法華経見宝塔品第11釈尊は、“私の滅後、だれか法華経を説く者はいないか?”“虚空会(こくうえ)の儀式で無数の仏が来集したのは、令法久住のためである”と語ります。
「令法久住(りょうぼうくじゅう)」(法華経387ページ)とは、「法(ほう)をして久(ひさ)しく住(じゅう)せしめん」と読み下し、未来にわたって法華経が伝えられていくようにすることです。
大聖人は、虚空会に無数の仏が集まった意義について、「三仏の未来に法華経を弘めて未来の一切の仏子にあたえんと・おぼしめす御心の中をすいするに父母の一子の大苦に値うを見るよりも強盛にこそ・みへたる」(御書236ページ)と仰せです。
「三仏」とは釈迦仏、多宝仏、十方分身の諸仏のこと。
すなわち、すべての仏が全民衆を救わんとの願いは、一人の苦しむわが子を救う親の思いよりも強盛に思われると記されています。
令法久住こそ仏の切なる願いなのです。
大聖人は、「一切の仏法も又人によりて弘まるべし」(同465ページ)、「伝持(でんじ)の人無(ひとなけ)れば猶(なお)木石(もくせき)の衣鉢(えはつ)を帯持(たいじ)せるが如し」(同508ページ)と仰せです。
いくら偉大な法があるといっても、それを受持し、弘通する人がいなければ、未来にわたって民衆を救済することはできません。
令法久住といっても、その真意は、伝持の人の出現にあるのです。
 
日蓮大聖人の御書から 「上野殿御返事」について
 
従藍而青の後継を輩出
「上野殿御返事」(御書1554ページ)は、日蓮大聖人が青年門下の南条時光に与えられた御抄です。
時光は7歳の時、父を亡くします。それから14年、21歳になった時光は、「情けに厚い人」と言われた父のすばらしい資質を受け継ぎ、信心の後継者としても立派に育っていました。
本抄で大聖人は、父以上に成長した時光の姿を、「あいよりもあをく・水よりもつめたき冰かなと・ありがたし・ありがたし」(同ページ)と、「従藍而青」の譬えを通して、喜ばれています。
「従藍而青(じゅうらんにしょう)」は、『摩訶止観(まかしかん)』にある言葉で、「藍(あい)よりして而(しか)も青し」と読み下します。
植物の藍の葉から取る青い染料は、何度も重ねて染めることで、濃く鮮やかな青色を発します。
同じように、大切な後継の友をどこまでも信じ、真心の激励を重ね、自分以上の立派な人材に育てることが大切です。
今、広宣流布の舞台は、世界の各分野へと広がっています。
世界広布の大河の流れを、さらに大きく広げ、水かさを増すためには、これまで以上に多様な人材群の輩出が必要です。
地域にあっても、学会の伝統である“後輩を自分以上の人材に”との心で、新しい人を育てていくことが重要です。
人材を育てる人が真の人材なのです。