小説「新・人間革命」 陽光20 1月25日

山本伸一は、斎木安弘に約束した。

 「私は、必ずブラジルに行きます。その時は、苦労したことがすべて、大きな喜びに変わるよ。いや、苦労した分だけ、喜びも大きくなる。

 ともかく、広宣流布が進めば、魔が競い起こるのは当然だ。

 御書にも、『此の法門を申すには必ず魔出来すべし魔競はずは正法と知るべからず』(一〇八七ページ)と仰せじゃないか。

 ブラジルの青年たちは、それを体験を通して学んだ。そして勝った。これは、すばらしい財産だよ。

 栄光の未来のために、しっかり青年を育てていこうよ」

 「はい!」

 斎木は、決意のこもった声でこたえたあと、伸一に尋ねた。

 「先生、青年を育成するためのポイントはなんでしょうか」

 伸一は言下に答えた。

 「青年を信頼し、大切にして、尽くし抜いていくということです。未来の指導者に仕えるような気持ちで、青年に接していくことです。

 そして、青年が全責任をもって、主体的に、伸び伸びと頑張れるようにしていく。そうすれば、青年たちは、自信と誇りと希望がもてる。それが成長の原動力になっていくんです」

 文豪ロマン・ロランは記した。

 「先輩の人たちがあなたに尽くしてくれたよりも、もっとよく、後輩の人たちに尽くしておやりなさい」(注)

 太陽の光を浴びて草木が伸びるように、後輩を思う先輩の温かな人間性に育まれ、人は伸びていくのである。

 伸一は言葉をついだ。

 「そのうえで、基本をしっかり身につけられるようにしていくことが大事になる。

 連絡や報告にはじまり、勤行、折伏、教学、家庭指導など、特に信心の基本が習得できるよう応援することです。

 また、訓練も大切です。訓練というのは、物事を体で覚えて、体得していくためのものです。それができていないと、頭ではわかっていても、いざという時に的確な対応ができない。

 さらに、新しき挑戦こそ、青年の生命です。仮に失敗があっても、青年の挑戦を最大に讃え、見守っていくことが必要だと思う」



引用文献:  注 ロマン・ローラン著『ジャン・クリストフ豊島与志雄訳、岩波書店