小説「新・人間革命」 陽光41

最後となったマリブ研修所での青年研修では、山本伸一からメンバーに卒業証書が授与された。
 「アメリカの未来を頼みます」
 「平和の戦士になってください」
 「民衆のために戦う幸福博士に!」
 伸一は、一人ひとりに声をかけながら、卒業証書を手渡していった。
 それから彼は、青年たちと共に、研修所の庭を散策したあと、芝生の上で懇談のひと時をもった。樹間を渡る海風が、さわやかであった。
 青年の一人が、瞳をキラキラと輝かせながら伸一に尋ねた。
 「先生のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)での講演を聴かせていただき、その視野の大きさと哲学的な深さに感動いたしました。
 そうした力は、どうやって身につけられたのでしょうか」
 伸一は言下に答えた。
 「すべて、師匠である戸田先生によって育まれたものです。つまり、戸田大学で学び、教育された成果なんです」
 伸一は、懐かしそうに戸田をしのびながら語っていった。
 「私の最高の栄誉は、戸田大学の卒業生であるということです。
 私は二十一歳の時に、戸田先生の出版社に勤めましたが、先生の会社の経営は行き詰まってしまった。先生をお守りするために、私は夜学を断念して、事業の再建にすべてをなげうちました。
 その私のために、先生は、命を削って個人教授をしてくださった。日曜ごとにご自宅で、また、会社でも毎朝、万般にわたる学問の授業をしてくれました。講義は何年も続きました。
 それが戸田大学です。
 先生は講義を通し、学問のホシとは何かを教えてくださった。
 また、単に知識を詰め込むのではなく、智慧の眼を開かせることに、最大の力点を置かれて講義された。
 先生は晩年、皆にこう言われた。
 『戸田門下生で伸一にかなう者はいないな。どこに出しても恥ずかしくない。
 どんな指導者と議論しても、どんな学者と議論しても、負けない男をつくっておいたよ』
 この先生があってこそ、今の私があるんです」