小説「新・人間革命」 陽光51 3月3日

 山本伸一は、グアム島の代表に、島の気候や産業、メンバーの様子などを尋ねていった。

 現地のメンバーのなかには、発見された横井庄一の通訳をしたという人もいるという。

 また、戦時中、日本軍に、死ぬほどの拷問を何度も受けた人もいたというのだ。

 伸一は語り合ううちに、頭のなかで、一つの構想が次第に具体化していった。

 ――彼は以前から、日蓮大聖人の仏法を基調にして、世界平和と全人類の幸福と繁栄をめざす国際団体の、結成の必要性を痛感していたのだ。

 これまで、各国・地域の組織が連帯し、協力し合いながら、仏法を根底に、平和と幸福を築いていくために、「ヨーロッパ会議」「パン・ア

メリカン連盟」「東南アジア仏教者文化会議」が発足していた。

 伸一は、それをさらに広げ、全世界を一つに結ぶ、「創価学会インタナショナル」ともいうべき、国際団体の発足を構想していたのである。

 核戦争の脅威や地球環境の深刻な悪化、差別、貧困、飢餓など、現代のかかえる諸問題を見ても、国や地域を超えて、世界が連帯して立ち向かわなければならないテーマであるからだ。

 この地球から不幸の二字を絶滅すること――それこそが、われら仏法者の使命である。

 伸一は、その国際団体の結成の時期を、創価学会創立四十五周年にあたる明一九七五年(昭和五十年)の初頭と考えていた。そして、その結成の場所を、世界平和への誓いを込め、戦場の島となったグアムにしてはどうかと構想したのである。

 伸一は、グアムの代表に言った。

 「グアムには、戦争に苦しめられた、悲惨な歴史があります。

 だからこそ、みんなが力を合わせて、グアムを平和と幸福の楽園にしていってください。

 そのための仏法です。そのために、皆さんがいるんです。

 グアムは世界広宣流布の歴史のうえで、大事な意義をもつ地域になるでしょう」

 メンバーは、伸一の言葉が、何を意味するのかはわからなかった。しかし、自分たちの大きな使命を感じ取り、決意を新たにするのであった。

   (この章終わり)