小説「新・人間革命」 友誼の道17 5月21日

山本伸一は続けた。

 「『創価』の名を冠した学校は、東京に中学と高校の男子校、大阪に中学と高校の女子校、そして東京に大学があります。

 これから小学校をつくる予定であり、現在、研究を進めております。

 したがって、今日は、皆さんの学校から、大いに学ばせていただきたいと思います」

 すると、教職員の代表が言った。

 「私どもこそ、わが校に参観に来ていただき、光栄です。山本先生一行のご来校は、教師にとっても、児童にとっても、大きな励ましです。

 また、中日の相互理解を深め、教育の未来を考えていくうえで、私たちにとっても、大事な機会になると思います」

 伸一は笑顔で訴えた。

 「私は、二十一世紀を思う時、最重要の課題は教育であると考えております。

 教育こそ、人間文化を向上させ、平和社会を建設していくうえで、極めて重要な役割を担っているからです。

 しかし、残念なことには、日本も世界も、教育は行き詰まっています。今日ほど、教育改革が必要とされている時はありません」

 伸一の話に、教員たちは眼を輝かせ、大きく頷いた。

 そして、教員の一人が、新華小学校の沿革や中国の教育方針などについて、情熱を込めて説明し始めた。

 「ここには、千人余りの児童が学んでおり、二十六学級があります。

 中国では、現在、小学校は六年制から五年制になっています。期間は、一年間、短縮されましたが、五年間で六年分の学習をしています」

 教員の話のなかで、伸一が強く共感したのは、「啓発主義」の教育をめざしているということであった。

 また、知育に偏ることなく、徳育、体育のバランスを保った育成に力を注いでいるという。

 さらに、社会性を身につけるために、高学年には「常識」という教科もあるというのである。

 中国では解放後、教育は、労働者、農民に広く普及し、発展の原動力となってきた。

 教員の声の響きには、自分たちがその重要な使命を担っているとの誇りがあった。この誇りと確信こそ、人間を育む、最も大きな力となる。