小説「新・人間革命」  6月21日 友誼の道43

この日、山本伸一は、午後六時から国際クラブで、北京で友好を結んだ人たちに対する答礼宴をもった。 

 廖承志会長夫妻や張香山副会長など、中日友好協会の人びとをはじめ、訪問した小・中学校、北京大学、工場、人民公社の関係者、さらには北京飯店の服務員の代表も招いての答礼宴であった。

 あいさつに立った伸一は、「北京滞在中、中国の朋友が示してくださった真心のご好意を、私は一生涯、忘れることはありません」と深く感謝の意を表した。そして、こう誓ったのである。

 「私は、この間、遺言にも似た心境で、今回、共に訪中した青年のメンバーに、『中国の人びととは世々代々、信義を貫いていくべきである』と心の底から訴えました。

 もはや言葉ではありません。私たちのこれからの行動を、見てください!」

 彼は、行動で自らの心を示そうとしていた。

 「行動がなければ、思想は決して実を結んで真理となりません」(注)とは、思想家エマソンの洞察である。

 決意は行動となり、結果を示してこそ、意味をもつのである。行動なき決意は空想にすぎない。

 廖承志会長は、伸一の話に応えて、こうあいさつした。

 「これまで、山本先生は、中日友好と中日関係の改善のために、絶え間ない努力をされました。

 山本先生は、また、再三にわたって、『創価学会が中日友好を堅持する信念は、絶対に変わりません。今後も、必ず、先輩が築き上げた中日友好の“金の橋”を護持し、強固にします』と言われました。

 私は、この機会をお借りして、山本先生と創価学会の友人の皆さんが、中日友好のために身を捧げる決意でおられることに対し、重ねて、心から賞讃と敬服の意を表したいと思います」

 五つのテーブルに分かれて、食事をしながらの歓談が始まった。

 伸一は峯子と共に、テーブルを回りながら、一人ひとりに丁重に御礼を言い、再会を約した。

 「私はこれから、何度も北京に伺います。たくさんの青年を連れてまいります。堅固な“金の橋”を架けましょう」

 そして、友誼の握手を固く固く交わし合った。



引用文献: 注 「アメリカの学者」(『エマソン選集1』所収)斉藤光訳、日本教文社