小説「新・人間革命」 友誼の道47  6月26日

山本伸一李先念副総理に、こう尋ねてみた。

 「組織が巨大化してしまうと、どうしても官僚主義化されていく傾向があります。それをいかにして防ごうとされているのでしょうか」

 副総理からは、こんな答えが返ってきた。

 「上層の指導部は、大衆による『批判』と、『自己批判』がなされなければなりません。

 もし官僚化すれば、大衆に批判される。正義は大衆にある――ということを自らに徹底し、不断に自身を戒めていく努力が必要です。

 また、できあがった組織のなかで安住するのではなく、人民に奉仕し抜いていくことによって、官僚主義は乗り越えていくことができます」

 伸一も、まったく同感であった。

 指導者たちが、人民に奉仕するという姿勢を失えば、保身に陥り、組織は硬直化し、組織を維持すること自体が目的となっていく。

 すると、人間は手段化され、「人間のための組織」ではなく、「組織のための人間」という転倒が起こる。

 組織に温かな人間の血が通い、組織が人間のためのものであり続けるには、指導者や幹部は「人民への奉仕」を絶対に忘れてはならない。

 それは、学会に即して言えば、「会員への奉仕」である。

 学会の未来も、最高幹部や職員等が「会員への奉仕」に徹し抜いていけるか否かに、すべてはかかっている。

 幹部は、会員に仕えるためにいるのだという哲学を、幹部自身がもち、実践することである。その一途さ、誠実さに、人びとは信頼を寄せ、そこに団結も生まれるのだ。

 また、官僚主義化を防ぐには、国であれ、団体であれ、指導者層と構成員とが絶えず意見を交わし合い、胸襟を開いた対話が行われているかどうかも、重要なポイントといえよう。

 学会は、一貫して対話主義で進んできた。伸一は、どこへ行っても、地元のメンバーとの語らいに多くの時間を割き、率直に意見交換してきた。

 また、大きな会合に出席した折にも、質問を受けたり、一人ひとりに声をかけるなど、一方通行にならぬように努めてきた。この心と心の往復に、創価学会人間主義がある。