小説「新・人間革命」 友誼の道65  7月17日

山本伸一は、笑顔で話を続けた。

 「私は、日本の富士鼓笛隊の少女たちから、友情のしるしとして、プレゼントを預かってきました。レコードとファイフ(横笛)二十本です。

 このレコードは、真心を込めて、自分たちで演奏した、『小朋友』(小さなお友だち)というレコードです。また、ファイフを包んでいる袋も、全部、手作りです」

 さらに、語学の勉強に役立つようにと、伸一はテープレコーダーなどを贈るのであった。

 その時、一人の少女が立ち上がった。

 「私たちの思いを詩にしましたので、聞いてください」

 即興詩の朗読である。

 「おじさま、おばさまからの贈り物。

 私たちの心は、喜びに高鳴る。

 一つ一つのプレゼントから、友情が伝わる。

 中国と日本の人民の、心と心はつながる」

 伸一は、大きな拍手をした。

 「すばらしい。ありがとう。大詩人です!」

 彼は、子どもに詩心が育っていることが、何よりも嬉しかったのだ。

 それから一行は、さまざまな教室を参観した。

 習字をしている部屋に入ると、七歳の少年が書いたという作品が壁に張られていた。見事な字であった。



 爺爺七歳去討飯

 バーバ七歳去逃荒

 今年我也七歳了

 高高興興把学上

  

 <祖父は、七歳の時に物乞いになった。父は、七歳の時に飢饉のため、故郷を逃げて流浪した。今年、私は七歳になり、このように喜んで学校で、勉学に励んでいる>

 戦乱や自然災害、封建的な制度によって塗炭の苦しみをなめてきた民衆が、新しい中国が誕生し、飢えることなく、子どもは教育を受けられるようになった。

 詩には、中華人民共和国の不滅の初心がある。

 人民の解放、人民の幸福――そのための新中国の建設であったし、その実現に向かって歩み始めた国を、人民は誇りとしているのである。

 国も、個人も、この初心を、絶対に忘れてはなるまい。常に、この初心に帰って、みずみずしい心で挑戦を重ねていくなかに、新しき向上があるからだ。